オマエの番
「オマエ……僕の初穂に何をしようとしたッッッ!」
池の周りを必死で探して、ようやく初穂を見つけたら、案の定和樹……いや、クズが僕の初穂に手を出そうとしてたなんて……っ!
すると。
「優太っ!」
初穂は驚いているクズの隙を突いて体当たりをして離れると、僕に抱きついた。
「優太……優太あ……!」
「初穂……良かった……」
愛しい彼女を抱きしめ、僕は優しくその髪を撫でる。
すると。
「優太あ……ッッッ!
忌々し気に、クズが僕を睨みつけていた。
はは……キレそうなのはコッチのほうなのにね。
「オマエ……こんな真似までするなんて、本当にクズ以下に成り下がったんだな」
「ウルセエッッッ! そもそも、俺はガキのころからオマエのことがずっと気に入らねえんだよ! なんの取り柄もねえくせに、なんでか知らねえけどみんなに頼りにされてちやほやされて! 俺のほうがオマエなんかより全部上なのに!」
は? コイツ、何言ってるんだ?
そもそも僕は、こんな奴と自分を比べたことなんてないのに。
「……まあいいや。優太、これから俺とソイツがヨロシクヤッてるところ、特等席で見せてやるよ」
ヘラヘラと嗤いながら、クズがゆっくりと近づいてくる……。
「初穂……今のうちに逃げて」
彼女の耳元で、そう耳打ちすると。
「あは……優太、大丈夫だよ」
「え……?」
ニコリ、と微笑む初穂に、僕は思わず呆けた声を漏らしてしまった。
すると。
「オマエ……オマエエエエエエエッッッ!」
なんと、茂みから立ち上がって鬼の形相を浮かべる武者小路さん!?
というか、なんでここに!?
「っ!? オ、オイ!? 離せ!」
そんな彼女に驚いていると、いつの間にか屈強そうなスーツを着た男の人が二人現れ、クズを拘束してる!?
「え……? な、なに? どういうこと?」
訳が分からず思いっ切り混乱する僕。
「ハハ……まあ、優太が驚くのも無理ねえよなー……」
「あはは……だよね」
同じく茂みから佐々木先輩と木下先輩が現れて苦笑する。
「あは……ごめんね? 実は……」
それから初穂が、詳しく説明してくれた。
どうやら初穂は、僕の実家……つまりこの街に来ることが決まった時から、ひよりと和樹に対して断罪する気満々だったらしい。
それで、佐々木先輩と木下先輩、それに武者小路さんに協力を仰いで、罠を仕掛けていたとのこと。
というか、だから武者小路さんは一緒に帰省に付き合ったのか……。
「……つまり、あの二人と遭遇するたびにわざと煽ってヘイトを集めて、人の少ないこの場所でみんなが待ち伏せをしておきつつ、一人になる状況を作って襲ってくるように仕向けた……そういうこと?」
「うん……」
僕の視線に耐えられなくなったのか、初穂はうつむいてしまった。
でも……これは初穂が悪い。
「初穂」
「は、はい」
「なんだってこんな危ないことをするんだよ! 一歩間違ったら、君が大怪我してたかもしれないんだぞ!」
「ご、ごめんなさい……」
僕に怒鳴られ、初穂はシュン、としてしまった。
「いいかい? 僕はこんな二人なんて別にどうだっていいんだ。僕が大切なのは君なんだ。僕のことを思ってしてくれたことは嬉しいけど、それ以上にこれは駄目だよ!」
「う、うん……本当に、ごめんなさい……」
すると、初穂はぽろぽろと泣き出してしまった。
本当に……初穂は……。
「……もう二度と、こんな真似はしないって約束してよ」
「うん……うん……っ! もうしないから! ごめんなさい! ごめんなさあい……!」
初穂を抱きしめてそう告げた瞬間、彼女は号泣してしまった。
「まあまあ優太、初穂ちゃんも優太のことを……」
「先輩達もですよ。なんで初穂を止めるどころか、加担してるんですか」
「うう……だ、だってよお……」
「あ、あははー……優太くん、落ち着いて……」
落ち着けって言われても、万が一のことを考えたら、どうしたって許せるような話じゃないし。
「直江くん、この私が初穂先輩に危ない真似、させるわけないでしょう?」
「……何言ってるの? 僕があそこで割って入らなかったら、初穂はこのクズに叩かれてたんだよ。それ分かってるの?」
「う……そ、それは……」
僕にすごまれ、武者小路さんが後ずさった。
本当にもう……。
「……それで武者小路さん、この後はどうするつもりなの?」
「き、決まってるわ。今の一連の出来事は全部カメラにも収めて証拠も充分。だったら警察に突き出すしかないでしょ?」
まあ、そうなるよね。
こんな奴、社会的に制裁されるべきだ。
「もちろん、それだけで済ませるつもりはないわよ? 二度とこの街にいられないようにするつもりなんだから」
調子を取り戻した武者小路さんは、そう言ってニタア、と口の端を吊り上げた。
うん……絶対に容赦しないんだろうなあ……。
「グス……優太……」
濡れた瞳で、初穂が僕の顔を覗き込む。
「……じゃあ、もうこの件は終わり。これからは純粋に“桜祭り”を楽しもう」
「あ……う、うん!」
そう言って微笑むと、初穂はぱああ、と笑顔を見せてくれた。
「おっと、その前に」
僕は地面に押さえつけられて苦しそうにしているクズの前に立つと。
「残念だったね。今度はオマエが、この街から逃げ出す番だよ」
そう告げると、僕は初穂の手を握ってまた“桜祭り”の会場へと向かった。
お読みいただき、ありがとうございました!
次回、いよいよ最終回です!
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