出逢ってくれて、ありがとう
「グス……はは、ビルの屋上で二人で泣いちゃったね……」
「うん……で、でも、私が泣いたのは君が泣かせるからだよ……」
「あ……また僕のせいにしてるし……」
「あは……だって、事実だもん」
ようやく落ち着いた僕達は、おどけながらそんなことを言い合った。
だけど、僕達は抱き合ったままで離れるつもりは全くない。
「直江くん……周りの人が私達を見てるね……」
「そうだね……だけど、僕は別に気にしないけどね」
「私も……誰が見てたって、そんなのどうでもいい」
そう言って、彼女は僕の胸に頬ずりする。
「……もう、僕の傍から離れるなんてこと、しないよね?」
「うん。というか、もう君から離れるなんて絶対に無理。もう私、君がいないと生きていけないもん」
「はは、やった」
僕はギュ、と彼女の身体を抱きしめる……って!?
「……直江くん、いつまで初穂先輩と抱き合ってるの?」
「「あ……」」
いつの間にか目の前に立つ武者小路さんにギロリ、と睨まれ、僕と柿崎さんは思わず声を漏らした。
でも。
――ギュ。
「……やだ。絶対に直江くんから離れない」
「初穂先輩!?」
「はは……だって」
ショックを受ける武者小路さんを見て、僕は苦笑する。
うん……僕も、柿崎さんから離れたくないから。
「それより武者小路さん、本当に助かったよ。おかげでこうやって、柿崎さんを見つけることができた」
「フン……感謝してるなら、離れなさいよ」
「えー……」
まあ、このままの状態でいても話が進まないので、僕はそっと柿崎さんの身体から離れるけど。
「こ、これなら文句ないでしょ!」
柿崎さんは、僕の右腕にしがみついてしまった。
ええと……これはこれで……うん、腕が彼女の大きな胸にメッチャ挟まれてる……。
「くうっ……私の初穂先輩がこんな男に……!」
「いやいや、何言ってるの?」
まあ、埒があかないからこの辺にしとこう。
「そうだ。今日は柿崎さんに相談……というか、提案だったり色々あるんだった」
「提案?」
「うん。ね、武者小路さん」
「あ、そうだったわね。初穂先輩の行方不明問題があったから、すっかり」
「あう!? ご、ごめん……」
思わず恐縮してしまった柿崎さん。
ああ……そんな姿も、僕には可愛くて、愛おしくて仕方がない。
などと考えていると。
「おお! 本当に見つかったみたいだな!」
「良かったー!」
佐々木先輩と木下先輩も屋上へやって来て、ホッと胸を撫で下ろしていた。
「あれ? だけど先輩、よくこの場所が分かりましたね……」
「ああ。私が連絡しておいたわよ」
「なるほど」
いつの間に先輩達と連絡先を交換していたのかは知らないけど、それなら納得だ。
「それより……コノヤロー! やったじゃねーか!」
「痛いですよ先輩」
バシン、と背中を思いきり叩かれ、僕は佐々木先輩をジト目で睨む。
「ね! ね! せっかくだしみんなで晩ご飯食べて帰らない?」
木下先輩が嬉しそうにそんな提案をした。
あー……確かにこんな時間からじゃ、ご飯を作ったりするのは大変かあ……。
「おう! 今日はお祝いだ! 俺がパーッと奢ってやるよ!」
「はは、だって」
柿崎さんを見て、僕は相槌を求めると。
「あは……私は君と一緒なら、なんだっていいよ」
うわあ……そんなこと言われたら、嬉しくてどうしようもないんだけど……って。
「「「…………………………」」」
いつの間にか、三人が僕達をジト目で見つめていた。
◇
「あは、楽しかったね!」
「うん」
佐々木先輩達との晩ご飯を終え、僕達はアパートに着いた……んだけど。
「ハア……アイツ等、どんだけ暇なんだよ……」
ドアの周りには、朝の倍の落書きがされていた。
あーあ、大家も大変だなあ。他人事だけど。
「直江くん……」
「はは、大丈夫。これもすぐに解決すると思うから」
「え? ど、どういうこと?」
「詳しくは部屋の中で話そう」
ドアの鍵を開け、部屋の中に入って明かりをつける。
「うう……今まで留守にしてただけあって寒いね……」
急いでエアコンをつけてコートを掛けると、僕は流し台でマグカップを二つ取り出す。
インスタントコーヒーの粉を入れ、熱湯とミルク、それに砂糖を入れて、と。
「はい」
「うん、あ、ありがと」
柿崎さんはマグカップを受け取り、ミルクたっぷりのコーヒーを口に含んだ。
「そうそう、それで話の続きだけど……」
僕は、さっき言いかけたことについて説明する。
まず、落書きや手紙を投げ込んだ連中に関しては、武者小路さんが犯人を突き止めるために動いており、彼女曰く二、三日で分かると言っていたこと。
木下先輩が今住んでいる、親戚が営んでいるというアパートの部屋を、僕達が借りられることになったこと。
「木下先輩の部屋に行ったことがあるけど、この部屋よりも広くて快適だよ。何より、流し台が広い」
「そ、その、嬉しいんだけど……木下さん達に迷惑かけちゃったね……」
「ああー……」
僕は柿崎さんに耳打ちする。
結局のところ、佐々木先輩と木下先輩が同棲するから部屋が空くってことを告げると。
「あは……な、ならいいのかな」
「そうそう。だから、みんなの好意はありがたく受け取っておこう」
「うん!」
笑顔で返事したかと思うと、柿崎さんはマグカップをテーブルに置き、居住まいを正した。
「ええと……どうしたの?」
「直江くん……私のこと、好きになってくれてありがとう……受け入れてくれてありがとう。私、君に出逢って……君を好きになって、本当によかった……」
「はは、それはコッチの台詞だよ……僕こそ、出逢ってくれてありがとう。僕のこと、好きになってくれてありがとう……」
僕は彼女の傍へ寄り、肩を抱き寄せる、
そして。
「ん……ちゅ……」
その可愛らしい淡い桜色の唇に、優しく口づけをした。
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