再会
「えー……なので、このような場合は初犯であるかどうかが、執行猶予が適用される判断基準となるわけで……」
「…………………………」
「「「「「…………………………」」」」」
先生が講義を進める中、柿崎さんは真剣な表情で時折ノートを取りながら説明を聞き入っている。
そして、この講義室にいる男連中のほとんどが、講義そっちのけで彼女に見入っていたりもする。いや、真面目に授業受けなよ……。
すると。
――キーンコーン。
講義終了の合図を告げるチャイムが鳴った。
「ふう……」
「どうだった?」
「うん! すごく面白くて有意義だったよ! うわあ……感激だなあ……!」
はは、どうやら柿崎さんはすごく喜んでくれたみたいだ。
「じゃあさ……今日だけに限らず、また一緒に授業を受けようよ」
「うん……また、君と一緒に授業を受けたい」
紺碧の瞳を潤ませ、柿崎さんが僕を見つめる。
なお、男連中は彼女に声を掛けたくて僕達から一定の距離を取りながら様子を窺っている。いや、誰一人として接触させるつもりはないから。
「それじゃ、今日のお昼はこの大学の食堂で」
「うん! すっごく楽しみ!」
ということで、悔しそうに僕を睨みつける男共の視線を無視し、僕達は食堂へと移動した。
「おう! 優太、コッチコッチ!」
「優太くん!」
食堂に着くなり、佐々木先輩と木下先輩が手招きをした。
「あ……そ、その、私、どこか別の場所に……」
「いやいや何言ってるの。今日はせっかく大学に来たし、僕の先輩達にも会ってほしかったんだよ。だから、今日は一緒に食べる予定をしていたんだ」
そう……僕は今日のために、先輩達にお願いしてセッティングをしてもらっていた。
しかも、先輩達の力で、特等席まで用意してもらって。
はは……何気に佐々木先輩も木下先輩も、この大学じゃ色々と顔が利くからね。
それに……。
「さあさあ、そういうことだから」
「う、うん……」
「……先輩達は、本当にいい人達なんだ。君がこれまで出遭ってきた連中なんかとは比べること自体間違ってるほどに」
「そ、そっか……君がそこまでいうほど信頼している人達なんだね……」
柿崎さんがようやく納得してくれたので、僕達は先輩の元へと向かう。
「へえ……優太から聞いた時にはマジでビックリしたけど……なんだよ、お前、うらやましいぞコノヤロ!」
「痛い痛い、やめてくださいよ……」
「モウ……ええと、初穂ちゃん、だよね? 私は“木下佳純”! こんな男共は放っておいて、私達は先に席に行こ!」
「あ、は、はい」
「「あ、待って!」」
サッサと席に向かってしまった二人を、僕と佐々木先輩は慌てて追いかけた。
「さあて、と。何食う?」
「僕は日替わりにします」
「初穂ちゃんは?」
「あ、私はその……直江くんと一緒で……」
ということで、僕達は食券を買ってトレイの上にそれぞれ頼んだものを乗せていく。
「あ、ここはごはんおかわり自由だからね」
「! お、おかわりしないし!」
あれ? いつもたくさんごはん食べるから、教えてあげたんだけど……。
「……優太くん、ちょっとデリカシーないんじゃない?」
「え!? そ、そうですか……?」
木下先輩にジト目で見られ、僕は思わず恐縮した。
「はは! まあ優太はなあ……そういうのは、これから俺がおいおい教えてやるよ」
「ハア……光機じゃ優太くんが合コンばかり行くようになっちゃうじゃない」
「確かに……」
「ヒデエ!?」
二人とこんなやり取りをしていると。
「プ……あはは!」
そんな僕達の様子がおかしかったのか、柿崎さんは吹き出してしまった。
「お! ウケた!」
「いやいや……ウケたんじゃなくて、呆れたんだど思います」
「同感!」
「やっぱりヒデエ!?」
うん、このままじゃ埒があかないので、早く席に戻ろう。
「あ、あの……ところで、私達の席の周りだけ……」
「ああうん、言いたいことは分かるよ」
「はは! もちろん、優太が君を紹介するってんで、チョット場所を確保しといたんだよ!」
「まあ、せっかくだし他の人達に邪魔されたくないしね」
「そ、そうなんですね……」
はは、柿崎さんが驚いてる。
でも……本当に驚くのはこれからだ。
僕はスマホを取り出し、素早くメッセージを打ち込むと。
――ピコン。
『もう食堂の前よ』
よし、予定通り。
そして。
「初穂……先輩……」
「っ!?」
後ろから聞こえてきた声に、柿崎さんは息を飲んで慌てて振り返ると……現れたのは、武者小路さんだった。
「美、琴……」
「初穂……せんぱあい……っ!」
抑え切れなくなった武者小路さんは、ぽろぽろと涙を零し、柿崎さんに抱きついた。
「先輩……先輩……逢いたかったあ……!」
「美琴……ごめん……ごめんねえ……っ!」
うん……二人を引き合わせて、本当によかった……。
「優太……お前、本当にいい顔するようになったな……」
「へ? な、何言ってるんですか急に……」
「まあでも……良かったんじゃない?」
「はい……」
僕達三人は、抱きしめあいながら泣き続ける二人を、口元を緩めながらしばらく眺めていた。
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