バッサリと
「優太! 今度の土曜日、俺を助けると思って一緒に合コンに行ってくれ!」
「嫌です」
次の日の朝、講義室で人目もはばからずに拝み倒している佐々木先輩に、僕は丁重にお断りした。
「な、何でだよおお! 今回は本当にマジでヤバイんだって!」
「いや先輩、言葉の意味が被ってますよ?」
というか先輩、今日はやたらと食い下がるなあ……。
いつもなら、僕が断ったらアッサリと引き下がるのに。
「あ、コラ! 優太くんにまで迷惑かけちゃダメじゃん!」
「佳純……だってよお……」
すると、遅れてやって来た木下先輩に後ろの襟首をつかまれ、佐々木先輩はそのまま引きずられていく。
「ええと……木下先輩、ひょっとして何かあるんですか?」
僕はちょっと気になったので木下先輩に尋ねた。
だって、佐々木先輩の様子もさることながら、木下先輩の口振りからも事情を知っているみたいだし……。
「んーと……あんまりいい話じゃないから、優太くんは聞かないほうがいいかも」
「そ、そうなんですね……」
とはいえ、木下先輩にここまで言われると、逆に気になってしまった。
「い、一応お聞きしてもいいですか?」
「よくぞ言った! 実はな……」
急に勢いよくズイ、と詰め寄った佐々木先輩が説明する。
なんでも、今度の合コンの女性陣が金持ちの令嬢が多く通っているという“憧渓女子大”がメンバーらしく、こちら側の人数が少ないとなるとさすがに困るらしい。
というのも、やはりそんな令嬢達を相手に人数が足らないとなると、合コンをセットしてくれた後輩の面子を潰すことになって、下手をすれば合コンを持ちかけた幹事の将来が消えてなくなりかねないとのことだ。
「……というか、なんでそんな面倒なところと合コンを組んだんですか」
「い、いや、合コンをセットしたのは俺じゃなくて、同じゼミの奴なんだけどさあ……」
「ハア……本当に、光機はお人好しというか何というか……」
あー……佐々木先輩、またお節介を焼いちゃったんだなー……。
本当に、しょうがない人だ。
「それで、あと何人足らないんですか?」
「い、一応、三人なんだけど……」
「……今回だけ、ですよ?」
「! 優太!」
そう返事した瞬間、佐々木先輩が思いっ切り抱きついてきた。うん、迷惑。
「それと、すぐに帰りますし僕には一切期待しないでくださいね?」
「すまん! 恩に着る!」
「もー……優太くん、ちょっと甘やかし過ぎじゃない?」
「あはは……」
そりゃあ僕だって合コンなんて嫌だけど、それでも、あれだけお世話になっている佐々木先輩が、誰かのために本当に困ってるとなったら、少しくらいは恩返ししないと、だし……。
「あ、も、もちろん合コン代は全部俺がもつから心配すんな!」
「いや、それは当然ですけど」
「優太くん……ホントごめんね?」
「い、いやいや、木下先輩が謝らないでくださいよ」
心の底から申し訳なさそうに頭を下げる木下先輩に、僕は焦って手をわたわたさせる。
「それで……そのセットしてくれたっていう後輩って?」
「おう……お前も知ってるかもだけど、あの“武者小路美琴”だよ」
「ですかー……」
よりによって、あの武者小路さん経由だなんて……確かに、ぶち壊した時点でこの大学にすらいられなくなるかも……。
「だ、だけど、そうすると僕が行ったらまずいことになるかもしれません」
「? どうして?」
「実は僕、彼女と同じゼミなんですけど、かなり嫌われてて……」
うつむきながら、僕は小さな声でそう告げる。
「アレ? だけど、メンバー候補の中に優太の名前を仮で入れてたけど、特に何も言われてないぞ?」
「そ、そうなんですか?」
「お、おう……」
どういうことだろう……僕がいることを知ったら、全力で拒否すると思うんだけど……。
「ま、まあ、何も言わなかったってことは、参加オッケーってことだろ! だから優太、土曜日は頼んだぞ!」
「はあ……」
佐々木先輩にバシン、と背中を叩かれ、僕は気の抜けた返事をした。
◇
「ただいまー」
バイトを終え、コンビニでいつもの牛乳を買って帰って来た僕は、玄関のドアを開けると。
「あ、お帰りなさい!」
「あ、う、うん、ただいま……って、えええええ!?」
出迎えてくれた柿崎さんを見て、僕は思わず驚きの声を上げた。
「か、柿崎さん、その髪……!」
「あ、あは……うん、思い切ってカットしちゃった」
髪を触りながら、恥ずかしそうにはにかむ柿崎さん。
だ、だけど、カットしたっていっても、あれだけ長かった髪がまさかのボブになってるんだから、そりゃ驚きもするよ……。
「そ、それで……似合う?」
柿崎さんが上目遣いで尋ねる。
に、似合うかどうかって聞かれれば、それはもう、ものすごく似合ってるとしか言いようがない。
けど……。
「う、うん、その……似合ってはいるんだけど……ま、まさかとは思うけど、昨日僕が余計なこと言った、から……?」
「っ! ち、違うから! たまたま、わ、私が短くしたくなっただけだし! べべべ、別に直江くんに言われたからとか、そんなの関係ないから!」
「そ、そうだよね……」
顔を真っ赤にして全力で否定する柿崎さんを見て、ホッと安堵するんだけど……うん、それはそれで、何だかやるせない気分になるのはなんでだろう?
でも。
「♪」
彼女が機嫌良さそうにしてるから、まあ良しとするか。
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