第ニ章「また今度」
信じられない、本当にリナがいるなんて。まだちゃんと確認したわけではないが、間違いなく彼女だ。近づいて確認したかったが、そんなことをしてたら授業に遅れてしまう。今はただ待つしかない・・・か。同じ大学に通ってるんだ。きっとまた会えるだろう
「本当にリナだったのかよ?」大地が聞いてきた。
「ああ、間違いない。」
「ねえこの話は後にしてくれない?久々の再開で興奮するのはわかるけど、もう時間がないの。二人はいいかもしれないけど、初日から遅刻なんて御免よ。」千秋がそうつぶやいた。
僕たちは授業に駆け込み、間一髪間に合った。
「ふう危なかった・・・。」
「誰のせいだと思ってるんだよ。」
「えへへ・・・。」
授業が始まろうとしていた。すると、教授らしき人が入ってきた。彼はホワイトボードに彼の名前を書き、簡単な自己紹介をした。するとすぐ、講義をはじめた。
講義が終わった。初日からまさか簡単なテストがあるなんてちょっとまいったな・・・。まあ、トップの大学ともなればこんなものか。でももしこの調子がずっと続くんなら、どうやら卒業までは至難の道のりになりそうだ。
僕たち三人は休憩をとるためにカフェテリアへ向かった。僕が通っていた高校にあったこじんまりとした質素なカフェテリアとはまったく違う、広々と装飾が施されたカフェテリアを目にして、なんだかすこし魅了されてしまった。
他の生徒よりも、僕は浮いていた。たぶん、田舎もんだってことはみんなの目にハッキリとわかっていたのだろう。まあ、他人の目なんて気にしてるわけではないが・・・。あいつらを喜ばせることが僕の目的ではないしな。
食事をもらって席についた。この場所はなんてたくさん食べ物の種類が豊富なんだろう。驚いて、リナのことを忘れそうになった。
「ああ、そうそう。リナの件なんだけど。」
「それで、本当に彼女だったの?同じ髪の色をした人とかではなく?」千秋が言う
「リナと誰かを間違えることなんて絶対にないよ。」
「ふーん・・・それは良いことなのやら悪いことなのやら・・・。」
話し合いの結果、授業が終わったらリナかどうか確認しに行こうということになった。僕は授業があったので、二人よりさきにカフェテリアを出た。今日のニ限の部屋へいった。ニ限目も最初の授業と変わらなかった。講義の後、すぐに小テストを受けさせられた。
おいおいこんなことならそもそもキャンパスに来る前にテストをしてくれよ・・・なんてな・・・。
そして最後の、三限目のテス・・・いや授業だ。よし、さっさと終わらせてリナを探すぞ。席につくと、リナが教室のドアから入ってくるのが見えた。同じクラスだったのか!講義が終わったら、すぐにでも彼女に話しかけられるぞ。
講義の途中、俺は何回かリナを横目で見た。どうやら、彼女を見ているのは僕だけではないようだ。髪の色が違う人や、外国人を見かけることは日本ではあまりない。最後にあったときよりも、ずっと綺麗だな・・・そう思った。するとリナは一瞬こちらを振り返って笑顔を見せてくれた。
もしかして、俺のことを覚えてくれているのか?なんだか、アイドルの追っかけをしているオタクみたいな気分になってきた・・・。でも、今明らかに俺に気づいたよなぁ。ああ早く授業が終わってほしい。あそこにいる彼女に、山程聞きたいことがあるっていうのに・・・。
壁にかけてある時計をまじまじと見つめる。一分一秒が永遠のように感じられた。そしてそんなえにもいわれぬような我慢の後、教授はやっとクラスのみんなを解放してくれた。よし、リナのところへ・・・そう思うやいなや、生徒の群れがリナのところへ駆けつけた。あまりに人がいすぎて彼女の姿はみえなくなった。こうなったらドアのところへいって人だかりが消えるのを待ったほうが良いかもしれない
五分・・・十分・・・十五分・・・。いったいなんなんだこいつらは?未だに蚊の大群のように彼女のところへおしかけて・・・。ずっとこのまま待ってても、埒が明かなそうだ。代わりに二人と合流することにした
「それで、リナにはあえたか?。」大地が聞いてきた。
「ああ、会いはしたけど・・・話すチャンスはなかった。授業が終わったら、みんな彼女の周りで押し合いへし合いだ。」
「待とうとしなかったのか?」
「言わせないでくれ。」
「しょうがねえ。ひとまず、キャンパスを見て回ることにするか。またリナにあえんだろ」
建物を出て、キャンパスを見て回ろうとしていたところ、大勢の人にかこまれた。いったいなんだ!?
「我が美術サークルへどうぞ!」
「いいや、こっちのバスケ部へ!」
「書道部のほうがいいんじゃないか!?」
上級生だった。どうやら一年生のクラブ勧誘に巻き込まれたようだ。どこへ行っても、立ちふさがってクラブ勧誘をしかけてくる。だが悲しきかな、僕たちは抜け道をなんとか見つけだすことに成功した。
人混みから抜けると、俺はニ人とはぐれてしまっていることに気づいた。千秋と大地はまだ向こうにいるだろうか。もっと静かな場所に移動して会おう、とメールしよう。
さらにその喧騒から遠ざかると、向かいの建物にリナを見つけた。今回はだれもいない。これは話しかける絶好の機会だ!
その建物に急ぎ足で向かい、ついに彼女に追いついた。
「ま、まって!」息つく間もなく彼女に呼びかける。
「あ、えと・・・はい?」
「名前は、リナだよね?」
「あ、はい・・・。リナといいます・・・。」
良かった。本当に彼女だ。
「リナ、あの田舎町にいたことは?6年前だ!」
「ええ・・・でもなんで?」
「なら覚えているだろう?俺だ、康太だよ!」
「あ・・・えっと・・・ごめんなさい・・・。誰ですか?」