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キコリの異世界譚  作者: 天野ハザマ


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上手く飛べるかな

 何はともあれ、迎撃態勢は整った。だからこそ、キコリは集まったドラゴンたちに挨拶に行くことにした。

 アイアース曰く、力を貸してくれるドラゴンはアイアースを除けば4人。

 爆炎のヴォルカニオン。

 守護のユグトレイル。

 創土のドンドリウス。

 楽園のデスペリア。

 この4人のうち、デスペリアだけはキコリは会ったことがない。

 アイアース曰く「意識していないと存在すら忘れてしまうドラゴン」らしいが……此処に来ているかは分からないが見ている、らしい。まあ、どのみち今キコリが会う方法はあまりないということではある。

 だからひとまずは会えそうな相手から会おうと考えるが、周囲を見回せば明らかにデカいのがいる。

 1人はユグトレイル。世界樹であるからこそ巨大だが、こうして見るとドラゴンであるとは外見だけでは思えないだろう。

 そしてもう1人はヴォルカニオンだ。その真っ赤な身体は太陽の輝きの下でもなお鮮やかで、瞳は確かな威厳を宿す輝きを放っている。何よりも……キコリを見ている。

 だからこそキコリは最初にヴォルカニオンに会うことを決める。使うのは久しぶりだが……自分の中のレルヴァたちに意思を伝え、レルヴァの翼を生成していく。


「さて、上手く飛べるかな……」


 舞い上がってみれば、心配していたよりは余程上手く、ふわりと舞い上がる。鳥が飛ぶのとも、他の生き物が飛ぶのとも違うこの感覚は、翼というものを徹底的に愚弄した「魔力で飛ぶ」やり方だ。具体的には妖精やドラゴンなどの飛び方であり……だからこそキコリはこれまで上手く飛べなかったのだが、レルヴァたちのサポートだけではなく自分の中に飛ぶための機能が追加されたのをキコリは感じ取っていた。

 恐らくそれはキコリの中で適応したゼルベクトの力の欠片に含まれていたものなのだろう。しかし、使えるものは使えばいい。そう考えながらキコリはヴォルカニオンに向かい飛んでいく。

 しっかり飛行を制御できている。そんな感覚がキコリの中にはある。どう飛べばいいか、歩くことを普段意識しないのと同じように理解できている。


「よし、いける。ハハ、もっと早くこう出来てれば良かったのにな」


 そうして舞い上がれば、キコリは先程から感じていた違和感の正体に気付く。そう、フレインの町を囲む壁だ。明らかに立派で、豪奢で……まるで防衛都市の壁砦のようだ。実際上には歩哨用の道があり、バードマンの衛兵たちが配置についているのが見える。


(たぶん……というか、ほぼ確実にドンドリウスの仕業だろうな)


 防御力が増しているのだから良いのだろうが、かなりドンドリウスの趣味が入っている気もする。

 まあ、結果的に立派になっているし問題も無いのだろう。

 それよりもこのまま何も考えずに飛んで、万が一飛行制御に失敗してヴォルカニオンにぶつかってしまえば問題だ。だからこそヴォルカニオンの横辺りへ向かうように飛行の向きを調整し……結局飛行制御に失敗することなく、キコリはヴォルカニオンの近くの壁の上に舞い降りた。

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