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キコリの異世界譚  作者: 天野ハザマ


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実行可能な解決法

「さて、と」


 主の居なくなった玉座に座ると、アサトは次元城へのリンクを開始する。

 これにリンクした状態のドルヴァン七世は強敵だったが、隙が出来たのは幸運だったとアサトは思う。だが……リンクを進めていくと、アサトは舌打ちする。


「大分壊されてんな。俺じゃなかったらお手上げだったぞ」


 アサトは転移者だ。道を歩いていたら突然何かに引きずり込まれ、この世界へと落とされた。

 幸いにも魔力の使い方や自分の使える力についての説明書じみたものが自分の頭の中にあったため、そこまで生き残るのに苦労はしなかった。

 しなかったが……帰る方法については「ドラゴンのシャルシャーン」という単語以外は一切分からなかった。それだけが刷り込まれたかのようにアサトの頭にあったのだ。

 だからこそ、その言葉を頼りにアサトの旅は始まった。

 邪魔する者や、必要だと感じた場合に現地人を殺すのは全く躊躇わなかった。

 此処が自分の世界で無いのは明らかだったし、そんな場所で恨まれたところで何の痛痒も感じなかったからだ。

 そんな中で、どうにもこの世界に「生まれ変わった」連中がいるらしいことを知った。神殿の図書館などに残された日本語や英語、その他文字かどうかも理解できないもので書かれたノートや本の数々。

 転生、チート……そういった言葉についても、そこでアサトは知った。そして元の世界に帰るための手段は、そこにはないということも。

 アサトの頭の中にあったシャルシャーン。それこそが元の世界に帰るカギだと信じてあちこち放浪したが、その手段は見つからなかった。

 しかし……防衛都市ニールゲンの神殿で、ついにその鍵を見つけた。

 それがかつて転生者が造ったという「次元城」だったのだ。劣化が酷くほとんど読めなかったが、それこそは。


「これの主機能は『転移』だ。つまり、こいつを使いこなせば俺は元の世界に帰れる……!」


 だからこそ争いがどうとかドワーフがどうとか、そんなものにアサトは一切興味がない。

 これはアサトが元の世界に戻るためのやっと見つけた手段だ。他の連中になど渡せない。


「リンク完了。破損機能の再生開始。そうだ、リンクしている俺の力を使え」


 アサトの持つ「チート」は、自己再生。たとえ死んでも生き返ることが可能な、不死に近い能力だ。

 まあ、感覚として完全なる不死というほど万能でないのも分かっているが……同時にこれが、自分の中にある機能だというのも分かっている。だからこそ、リンクすれば自分の能力を次元城に使わせることが出来る。そう、これは転移装置であり能力増幅装置でもある。アサトの読んだノートを解読する限りでは、疑似的なドラゴンとなることを目指したらしい。まあ、そんなことはどうでもいい。


「さあ、転移だ。出来るんだろ? 俺を地球に……ん?」


 次元城から伝わってきた言葉に、アサトは目を見開く。

 魔力不足。そして実行可能な解決法。それはアサトにとっては……なんら躊躇うことではなかった。

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