表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キコリの異世界譚  作者: 天野ハザマ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

749/837

吟遊詩人パナシア

 声をかけられ振り返った先。そこに立っていた姿に何となく記憶が刺激されて。

 少し悩んだ後、キコリは「あっ」と声をあげる。そうだ、この男は。


「前に会った吟遊詩人の人か」

「パナシアです。まあ、お会いしたのは結構前ではありましたが……」


 吟遊詩人パナシア。以前ニールゲンにいた頃に、森の中で会った吟遊詩人だ。

 アサトについての情報を教えてくれたのも、このパナシアだ。そう、記憶する限りでは随分とアサトについて調べているようだった。

 あのときはアサトのことなどほとんど関心は無かった。しかし、今はそうではない。知っている限りの情報をパナシアに吐いてもらいたいとキコリは考えている。

 しかし、そうであるならどうするのか? 答えは簡単だ。


「パナシアさん、お願いがある」


 真っ向勝負である。キコリは交渉とかそういうのは得意ではない。下手に搦め手を使おうとしても、言葉を商売道具にしているパナシアに敵うはずもないからだ。

 そしてキコリに真正面から頼みごとをされたパナシアは、驚きの表情を一瞬したものの、すぐに営業スマイルな笑顔になる。


「ええ、勿論ですとも。私に何が出来るか分かりませんが、これでも請われて芸を披露する身。お代さえ頂ければ最大限努力いたしましょう」

「あー……ああ。助かるよ」


 要は見合う代金を寄越せということなのだろうが、どうにも言い方が遠回し過ぎてキコリが理解するのに時間がかかってしまう。

 とにかく、代金を……ということであれば話が早い。人間社会のお金は使わなくなって随分経つが持ってきているし、それなりにはある。こういうときのために小分けにしていた袋を1つ掴み出し差し出すと、パナシアはそれを受け取り重さを確かめる。


「これはこれは。随分頂いてしまいましたね。ふむ……」


 パナシアは袋をサッとしまい込み「場所を変えましょうか」とキコリたちを手招きし歩き出す。

 何処に行くつもりか分からないが、そのままついていくと、パナシアは酒場の横の裏路地に入っていく。

 そのまま裏路地を進んで曲がると、そこは酒場の裏手のようだが……丁度建物の間に位置するせいで狭く閉じた空間になっており、人が居ない。そのせいか、物置にされているらしく空の樽や木箱が置いてあるのが見える。


「それで、私にお願いとは? 歌ってほしいものがあるというのであれば大歓迎ですが」

「いや、そっちじゃない。欲しい情報があるんだ」

「私に聞くということは……ああ、アサトの件ですか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍版『キコリの異世界譚』発売中!
『キコリの異世界譚』1巻書影
コミック『キコリの異世界譚』も連載中です!
『キコリの異世界譚』1巻書影
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ