表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キコリの異世界譚  作者: 天野ハザマ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

645/837

薪を割るみたいに

 どうすればいいのか。キコリの中には正解が浮かんではこない。

 そもそもキコリは、手加減して相手をどうこうするなんていう技を会得してはいない。

 キコリが会得しているのは不器用でも扱える、破壊力の高い技ばかり。そんなものを使うわけにはいかない。

 唯一どうにかなりそうなのはウォークライやドラゴンロアくらいのものだが、それだって一時的に動きを止めるものでしかない。それに、何よりも。


(アレには殺意が要る。だがドドに殺意を? 俺が? 無理だ……!)


 キコリにとって、ドドは大切な仲間であり友人だ。そんなドドに対し自分の中を殺意で満たすなど、出来るとは思えない。

 そんな動揺するキコリを見据え、ドドは大きく腕を振るう。


「そうだな。キコリ、お前はそういう尊敬できる友だ……! その友情を踏みにじるドドを許せなどとは言わん……!」

「ぐっ……!」


 ドドの拳に殴られ、キコリはドアを破壊しながら外へと転がり出る。そこには当然ながら通行人を含むフレインの街の住人たちがいて。


「お、おい!?」

「キコリ、ドド!? 何してんだお前ら!」

「あ……」


『従属』の力を防げた者もいたんだ。キコリがそう安堵した、その瞬間。ドドが叫ぶ。


「キコリは魔王様の配下ではない! 此処で仕留めなければならん!」


 瞬間。フレインの街の住人たちの瞳が、剣呑なものに変わる。友を見る目から、敵を見る目へと。

 ゾッとするような、その瞳の変化は……キコリの中に確かな動揺を引き起こす。

 まさか、こんな。一瞬で白から黒に変わるような、そんなことが。


「魔王様の……?」

「そうか。それなら、放置するわけにはいかないな……」

「ああ。キコリは強すぎる」

「俺たちだって『そっち側』なら従わない。やるしかない」


 ドドと同じだ。キコリはそう気付く。全員、正気でいつも通りの思考もキコリへの感情も、全て保ったままで優先順位の最上位が「魔王トール」に切り替わっている。つまり、これは……フレインの街をそのまま綺麗に乗っ取ったということだ。


「殺せ!」

「キコリを殺せ!」

「全員でかかれ! 魔王様のために命をかけろ!」


 武器を握り襲ってくるフレインの街の住人の攻撃はしかし、竜化したキコリの防御は貫けない。

 スケルトンの剣が、ゴブリンのナイフが、ミノタウロスの斧が、オーガの棍棒が、ゴーストの魔法が……次から次へとキコリへ降り注いで。それでも、キコリは無傷。


「魔王トール……」


 上空のグレートワイバーンに乗っている魔王トールへとキコリは殺意を込めた視線を向ける。

 フレインの街の仲間へは殺意を抱けなくても。


「殺す。お前は殺すぞ、魔王トール。薪を割るみたいに、お前の頭を真っ二つにしてやる」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍版『キコリの異世界譚』発売中!
『キコリの異世界譚』1巻書影
コミック『キコリの異世界譚』も連載中です!
『キコリの異世界譚』1巻書影
― 新着の感想 ―
[良い点] ぶちギレたキコリ [気になる点] 大事な大事なオルフェに洗脳魔法なんぞかけられたキコリとユグトレイル [一言] キコリもアイアースも(出てくるか知らんけどユグトレイルも)敵に回したバカの明…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ