この先、世界は
「……ふう」
見つけられる限りのデモンミノタウロスを倒し終わったキコリは、自分の中にチャージし流していた魔力の流れを止める。
今まで散々無茶してきただけあって、自分の限界が何処かはキコリ自身がよく知っている。
今日は無茶しないという約束でオルフェはついてきていないし、ようやくその辺で信用されてきたところなのだ。意地でも限界を超えるわけにはいかない。
「魔石もたっぷり……だな」
拾い集めたデモンの魔石は本来そのモンスターが持つものよりも質が低いらしく、たぶん本来そこまで育つ時間や環境などを無視して即席で作った結果ではないか……という話であるらしい。
そしてその質の低さに関しては、実のところキコリも理解できていた。
「味は、まあ……そこそこ、か」
ガリッと齧った魔石は、キコリの口の中で溶けて消えていく。どういう理屈かは分からないが、身体のドラゴン化が進み始めてからキコリは魔石が美味しそうに見えるようになっていた。
とはいえ石ころを食べるなどキコリの常識からすれば有り得ない。
有り得ない……が。1度誘惑に負けて齧ってみた時、普通に食べることができてしまったのだ。
それで何かが変わるというわけでもなかったが、まあちょっとしたオヤツ程度にはなる。
……それをオルフェに言った時はとんでもなく長い溜息をつかれたのだが……それはさておいて。
「……すでにデモンも生活の一部に組み込まれ始めてる。この先、世界はどうなっていくんだろうな」
考えないようにしようと思っても、やはり考えてしまう。神々がこの状況について何も考えていないとは思わない。思わないが……何も分からないというのは、やはり怖いものだ。
といっても、キコリに何が出来るとも思えないのは事実だが。どれだけ強くなっても、世界なんて変えられない。そんなことを考えながらキコリは身を翻して。
「そうだね。世界は急速に変化していく。この流れは止められない……それこそ、流れそのものを破壊しない限りは」
「シャルシャーン!?」
キコリが振り返った先には、なんだか久しぶりに会う気がするシャルシャーンが立っていた。
その胡散臭い笑みも相変わらずで、キコリはしかしシャルシャーンの言う思わせぶりな言葉が気になってしまう。
「……なんだか久しぶりだな、シャルシャーン」
「うん。君のことはまあ、把握してる。幸せに生きてるようで何よりだ」
「そうか。もし俺に何かをやらせたいっていう話なら断るぞ」
「別にやらなくていいよ? ボクだって何でも君にやってもらおうと思っちゃいない。ただ、君が気にしてるだろうことを教えに来ただけさ」
聞いてはいけない。キコリはそんな直感と共に「別に聞きたくない」と後退って。
「魔王軍……だっけ? アレの中心人物は魔物の王……魔王を名乗る人間だ。ただし異世界の……ね」






