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キコリの異世界譚  作者: 天野ハザマ


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美味しいと思いますよ

 翌日。クーンと一緒に行った冒険者ギルドでイレーヌから聞いたのは、驚くべき話だった。

 ちなみに、昨日のスライム退治の件を話したところ「詳しい話を」ということで、現在奥の部屋に通されている。

 なんと飲み物付きだ。果実ジュースは冷たくて美味しい。


「え……? 調査隊が戻ってきていない?」

「はい。といっても、まだ出発したばかりです。調査によっては1か月単位も珍しくはありません」

「相当奥まで潜ってるってことですか?」


 キコリがそう聞くと、イレーヌは「そうです」と答える。


「異変の原因が奥にあるならば、それを調べる為には当然更に奥に行かなければいけません。当然、帰還までの日数は伸びます」

「確かに……そうなると、スライムが出てきたのはその人たちから逃げてきたって可能性も?」

「スライムですか。さっき報告は受けましたが……」


 言いながらイレーヌはキコリをじっと見る。


「破壊魔法ブレイク……でしたか。まだ少し信じ難い部分はあります」

「そう言われても……」

「武器破壊魔法ソードブレイカーを参考にしたとは言いますが、そう簡単なものではありません」

「あー……それは別の人にも言われました」


 具体的にはアリアに言われている。

 魔法の改編や新規魔法の作成は、いうほど簡単なことではない。

 全ての魔法は絶妙なバランスの上に成り立っているからだ。

 分かりやすく言えば、重たい武器であれば破壊力が上がるからと超重い武器を作ったところで、マトモに振り回せはしない。むしろ動きが遅い分弱くなる。

 あるいは軽い武器なら速いと軽量化すれば、武器が脆くなって玩具以下になる。

 素人考えでゴミのような魔法になることは、よくあることなのだ。


「それを、アッサリ改良に成功したとか……まあ、他の人にマネできるようなものでもなさそうですが」


 そう、スライム退治の話をする過程でキコリの「破壊魔法ブレイク」については、その概要を話さざるをえなかった。

 だが……これはアリアも言っていたが「簡単に他人にマネできる魔法ではない」らしい。


「そもそも武器破壊魔法ソードブレイカーだって、それを明確にイメージできる人は少ないんです」

「……みたいですね」


 キコリが思っていたよりも「魔法に必要なイメージ」というのは難しいものであったらしい。

 キコリの読んだ初心者用の魔法の本には載っていないことだが、魔法のイメージとは「頭に設計図を描く」ようなものであるらしい。

 魔法の勉強の為の本は、それを簡易的に書いて導くものであるようだ。

 つまり新規の魔法とは新しい図面を頭の中に描くことであるらしい。


「キコリさんの適性は魔法戦士のようですが……アリアと同じタイプですね。彼女も『壊せば勝てる』が信条でしたから」

「あー……まあ、真理ではありますよね」

「そういうとこですよ」

「えっ」

「まあ、僕はそういうとこを見込んでるけどねー」

「えっ?」


 アリアと同じというのは嬉しい気もするが、なんだか素直に受け入れてはいけない気もする。

 そんな事を考えるキコリだったが……イレーヌは、そんなキコリ達に1つの提案をする。


「そうです。クーンさん達も調査に参加してみませんか? 今のところ、それなりに成果を持ち帰ってますから。勿論、出来る範囲で結構です」

「調査……ですか」

「ええ。突然のハプニングも報酬になるなら美味しいと思いますよ?」

「まあ、確かに」


 またスライムに出会ったとしても、その事実が報酬になるなら美味しい話だ。

 クーンにチラリと視線を向ければ、クーンは「僕は受けてもいいと思うよ。キコリは?」と返してくる。


「俺も受けていいと思う。あ、何も無かったっていう報告も報酬になるんですよね?」

「ええ、勿論です。そればかりでも困りますが」


 ならば、それは間違いなく美味しい話だ。

 クーンと頷きあうと、キコリはその依頼を受ける事にしたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] まぁ、新人二人なんだから、森の周りからだね(゜ー゜)(。_。)ウンウン
[気になる点] 「 ↑みたいに最末尾にかっこの始まりが一個あるのですが何か最後にセリフがあったのが消えたのか?それとも誤タイプでついたのでしょうか?
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