倒すのに苦労する割には
「い……ぐうううううううっ……」
手が溶けかけた痛みが襲ってきて、しかし触れることすら出来ない。
そこにクーンが駆け寄ってきて、「ヒーリング」と唱える。
ただそれだけで手の痛みが消えて、キコリは元に戻った自分の手を驚きの表情で見る。
「え……手が治った?」
「回復魔法だよ。ポーションじゃ間に合わない傷とかも治せるよ?」
「そ、うか……ありがとう」
「どういたしまして」
キコリはお礼を言った後、ふとクーンと出会った時の事を思い出す。
「……出会った時にポーション使ったのは、魔力の問題ってことか?」
「まあね。キコリがどの程度で目を覚ますか分からなかったから、温存しときたかったんだ」
「なるほど……」
「それよりキコリ! 今のブレイクとかって魔法! 凄いじゃない!」
「あ、ああ。上手くきまって良かったよ」
「あんな魔法隠し持ってたなんて、やるなあ!」
「いや、そんな凄いものじゃない。それに、あれ1回で魔力切れだ」
そう、キコリの魔力ではブレイクは1回しか使えない。
「だとしても凄いよ!」
「スライムが予想通りに魔法に弱かったからできただけさ」
そう、思い出したのはアリアの言葉だ。
魔法は魔力のぶつかり合いで、筋肉と同じ。
スライムがあれだけ物理攻撃に無敵なのであれば、魔力はほとんどないんじゃないかと。
そう考えて賭けに出ただけなのだ。
もしスライムが魔力をたっぷり持ってでもいたら、キコリの破壊魔法ブレイクは全く通用しなかっただろう。
魔法は効く。それが分かっているからこそ、賭けに出れたというのもあるが……。
「それにしても魔石はないのか? スライムって」
「ないよ。スライムは倒すのに苦労する割には徒労だって有名だからね」
「んー……」
魔石は魔力の塊のようなものであるらしい。
強いモンスターは大きい魔石を持っているが……どうであるにせよ、それは魔力だ。
ならば、もしかすると。
「……スライムは魔力がないから魔石もない……?」
「あ、その考え面白いね」
「面白いか? いや、それより……だとすると……」
強いモンスター……というよりも魔力をその身に多く持つモンスター程魔石が大きい。
そして魔力の高いモンスター程キコリの「破壊魔法ブレイク」は効きにくい。
恐らく火を出したり氷を出したりと自然現象を発生させる他の魔法よりもそれは顕著であるはずだ。
つまり、それは一つの事実を示唆している。
「……俺の魔法……強い相手程効かなくなるってことじゃないか」
いざという時ほど使いたいのに、いざという時ほど役に立たない可能性が高い。
なんとも使いにくい魔法を会得してしまったと。
キコリは思わず落ち込んでしまいそうになった。
使い方次第ってとこもあるんですけどね。






