もっと勉強しよう
本日2回目の更新です!
「ふーん……あとでどんなのあるか教えてくれるか?」
「いいよ。ところでキコリ、これ被る?」
クーンが差し出してきたホブゴブリンの兜を見て、キコリは首を横に振る。
「今着けてるので充分だ。これ以上は感覚が鈍りそうだ」
「そうだね。僕もそう思う」
「……なんで薦めた?」
「それでも要るって人はいるし。よいしょっと」
ホブゴブリンの装備一式を袋に入れると、クーンは立ち上がる。
「じゃあ、重いし帰ろっか」
「そうだな。ていうか、俺が持とうか?」
「いいよ。キコリは途中モンスターが出たら対処してくれればいいから」
「ああ」
そう言うキコリだったが、その後モンスターとは全く出会わずに英雄門まで辿り着いてしまう。
「……んー」
「やっぱりベテランが片っ端から狩ったって説はありそうだね」
「そうなのかな」
キコリは首を傾げながらも、冒険者ギルドへ辿り着きクーンと一緒に魔石を渡し換金する。
「そういえばクーンさん。キコリさんと組んだんですね」
「いやあ、それがまだアプローチの最中で」
「俺は組みたいと思ってるぞ、クーン」
イレーヌに笑いながら答えるクーンを遮るようにキコリが言うと、クーンは驚いたように振り向く。
「ええ!? いいのかい!? 今更冗談ですってのは無しだよ!?」
「いや、言わないよ。クーンの実力も性格も見たし。俺からお願いする立場だと思う」
「いやあ、ありがとう! ありがとう!」
「良かったですね、クーンさん」
ニコニコと笑うイレーヌに、キコリはふと疑問を覚えて聞いてみる。
「そういえばイレーヌさんはクーンとも知り合いなんですね」
「そりゃまあ。クーンさんは学がありますから、かなり目をかけてます」
「な、なるほど……」
学の無いキコリは思わず顔を背けそうになってしまうが、確かに神官であるらしいクーンは知識豊富なのだろう。
「あ、そういえばイレーヌさん。キコリと2人で賞金首倒しましたよ、手甲のホブゴブリン。はい、証拠」
言いながらクーンが手甲をカウンターに置くと、イレーヌは驚いたような表情になる。
「これは……会ったんですね。しかも倒した?」
「はい。キコリが昨日かな? 金的食らわしたみたいで、そのせいか重装備になってて。おかげで御しやすかったです」
あはは、と笑うクーンの言葉がキコリは理解できない。
重装備だと普通は倒しにくいのではないだろうか?
「格闘タイプの癖に着込んじゃって、逆に隙だらけなんですもん。馬鹿ですよねー」
笑いあうクーンとイレーヌの会話についていけず、キコリはそっと視線を逸らす。
組むことを決めたのだし、頭の良い会話はクーンに任せておけばいいのかもしれないが。
(……もっと勉強しよう)
そんな事を、そっと決めたのだった。






