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キコリの異世界譚  作者: 天野ハザマ


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最低限度の文化的な生活ってやつ

 翌日。キコリは汚染地域の森の中でゴブリンの頭に斧を振り下ろしていた。

 すでに命を奪う感覚については何も思わなくなっている。

 そんなものは今更な話だが……キコリが思うのは、昨夜なんとか会得した武器破壊魔法ソードブレイカーのことだ。

 あの後結局ホウキの破壊には成功したが……まず、ソードブレイカーの魔法は使いにくい。

 相手の武器に直接触れるような状況など、戦闘中にどれほどあるというのか?

 斧でモンスターと鍔迫り合いなどするはずもないし、そんな状況に追い込まれたなら、それはキコリよりずっと強いモンスターであり……間違いなくキコリが僅かな時間もおかずに叩き切られるだろう。


「覚える魔法間違えたか……? いや、でも……」


 そもそもの話。武器破壊魔法でホウキを破壊できるのはおかしくないだろうか?

 ホウキはどう考えても武器じゃない。百歩譲って人を叩けるから……としても、それなら投げて武器になる石はどうなのか、レンガはどうなのか。

 答えは恐らく「破壊できる」だろう。しかし、そうなると英雄ショウとかいう転生者が「ソードブレイカー」と名付けたのは、あくまで本人のイメージがそうだから……という話でしかないのだろう。

 つまり、この魔法の本質はソードブレイカーなどではなく。


「ギイイイイイ!」


 立ち止まったキコリを絶好のチャンスとでも思ったのだろうか。

 粗末な斧を構え襲ってくるゴブリンを、キコリは丸盾で殴り飛ばす。


「……もしかして。なんでも壊せるんじゃないか? この魔法……」


 勿論、そんな便利なものではないはずだ。

 アリアが筋力での殴り合いに例えたように、魔法は魔力での殴り合い。

 筋肉の種類が変わっただけで、キコリを圧倒的有利に導いてくれるものでは断じてない。

 しかし、思うのだ。これは新しい武器になると。


「ハハッ、ガキだな俺。新しい玩具じゃねえんだからさ」


 そんな考えでは死ぬ。分かっている。当然分かっている。

 しかし、思うのだ。もっと稼ぎたい、と。

 小銭稼ぎで終わりたくはない、と。

 もっと稼げる男になりたいと。


「なあ、お前もそう思うだろ?」


 歩いてくるのは、大型ゴブリン……ホブゴブリンだ。

 当然だ、昨日の1体で全部なんてことは有り得ない。

 昨日よりもほんの少し奥に進むだけで、もう「こんなもの」が出てくる。


「たとえ無様に薄汚く生きるにしても……最低限度の文化的な生活ってやつくらいは、望んだっていいはずだ。誰だって、そんなもんを英雄的行動なんて言わないだろう?」

「ゴオオオオオオオオオ!」

「死ねよ! 死んで……俺の稼ぎになりやがれ!」

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― 新着の感想 ―
[一言] ブレイカーだから、元日本人なら知っている骨格標本君の肩の関節と、腰の関節を砕いたら、立てないし、持てないので、そこら辺が出来るなら、斧の刃先を自分の手だと思って使ったらできないかな……
[一言] えー、もう風呂トイレお姉さん付きのめっちゃ文化的な生活してるじゃん!
[一言] しれはソードブレイカーなんてちゃちなものではなくて、チェーンソーですよね。 これは、木を切り倒すお仕事とかゴブリンとかオーガを切り倒すお仕事がはかどりそうですな。
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