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キコリの異世界譚  作者: 天野ハザマ


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お前達を

 角兎にゴブリン。どちらもモンスターの中では弱い方だが、それに慣れた頃に初心者が陥る罠がある。

 自分は出来ると、そう考え始めた頃に引っかかる罠。

 キコリは今まさに、そういうものを前にしていた。


「ギギギ……」

 

 視線の先で剣をブラブラとさせながら笑うゴブリン。

 如何にも誘っている風だが……流石に、そんなものを見ればキコリは警戒する。

 ゴブリンは待ち伏せをすることを知っているからだ。


(木の陰、1、2、3……なんだこれ。4、5……まだいるぞ)


 木の上にも弓を持ったゴブリンがいる。

 こちらを狙っているのは明らかだが……それにしても数が多い。

 どうするべきか。いくら何でも、あの数に挑んで無傷で済むとは思えない。

 しかし、逃がしてくれるとも思えない。背を向けた瞬間に弓で射られる未来が目に見えるようだ。


(弓は持ってる。でも、使わせてはくれないだろうな……)


 ゴブリンから鹵獲した弓も矢もある。

 しかし扱ったこともない武器を当てられると思う程傲慢ではない。

 ならばどうするか。決まっている。殺されたくないなら、殺すしかない。

 罠にかかれと。こちらを誘うように笑うゴブリンに向けて、キコリは息を吸い込む。


「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」


 ウォークライ。お前達を殺してやるというキコリの咆哮が響き、弓持ちのゴブリンがあらぬ方向へと矢を放ち、隠れていたゴブリン達が僅かにその姿を現す。

 そして、キコリは……ナイフを真正面のゴブリンへと投擲する。


「ギッ!?」


 叫び倒れたゴブリンの生死を確認はしない。あれは生きている。

 そう確信したままキコリは弓矢を捨てると、まずは左のゴブリンの群れへと斧を振りかぶり突っ込む。

 ゴン、と。斧をまず1体に叩きつけ、こん棒を引き抜き次の一体の顔面に突きを入れる。


「ブゲッ……ガッ!?」


 こん棒を捨てると戻した斧をゴブリンの首に叩きつけ、残る1体のゴブリンへと襲い掛かりコレも殺害。

 オロオロする木の上の弓ゴブリンを無視し、反対側から襲ってくるゴブリンを迎え撃つ。


「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」


 再度のウォークライ。僅かにゴブリンの動きが鈍ったが、先程よりも効果が低い。

 キコリの殺意に慣れてきている。分かってはいたが、ウォークライは何度も使えるような手ではない。

 だが、それでも充分。弓ゴブリンの乗っている木にキコリが斧を叩きつけると、悲鳴と共に揺れる木から弓ゴブリンが落ちてきて。

 キコリはそれを、木に叩きつけるようにして斧で叩き殺す。

 その風景に動揺したゴブリンへとキコリはナイフを投げつけ、そのまま残りのゴブリンへと襲い掛かる。

 それは、とてもではないが華麗とは言い難い光景。獣に近い、しかし確かに理性を感じさせる戦い。「才能の無い」キコリが選べる、唯一の戦法であった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 過信 過信しやすいと自覚できるなら、自重出来るかもしれないもんね
[一言] 狂戦士の弟子もまた狂戦士!?
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