魔法戦
タネ。それが何かなど、キコリに分かるはずもない。
ないが……やることは変わらない。
アイツは、キコリを殺すと言った。なら、それは当然受け入れられない。
こちらを殺すと言っている奴が相手なら、抗うしかない。
だから、抗う。だから、殺す。ゆっくりと、キコリは息を吸い込んで。
「拙い……アレだ!」
誰もいないはずの場所から、声が聞こえた。
ああ、そういうことかとキコリは気付く。そうか、だからだったのかと。
確かにそれは気付かないだろう。そう感心すらしていた。
放たれる電撃魔法が、キコリを貫いて。焦げながらも、キコリは空を見上げる。
だが、もう気付いた。だからもう、それは御終いだ。
出てこい。引きずり出してやる。そして……殺してやると。
殺意を籠めた咆哮が響き渡る。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
ドラゴンロア。今日2度目の魔力を籠めた咆哮が響き渡り、空の風景が砕けネクロマンサーの姿が3体に増える。
「ぐっ、ううう!?」
「なんと無茶苦茶な魔力の放ち方を……! 美しさの欠片もない!」
「あいつら……! また隠れてたの!?」
「3人もいたのか!」
オルフェとドドが驚きの声をあげ、オルフェは即座に炎の矢を放ち1体のネクロマンサーを貫く。
僅かに動きを止めていたネクロマンサーは避けることすら出来ずに貫かれ、その身体が燃え上がる。
「ガ、ガアアアアアア!? 馬鹿な、こんな魔法1つ、で……!」
「フン、当たりさえすりゃあたしの魔法の方が強いのよ」
「お、おのれえええ! フレイムウェーブ!」
「ファイアウェーブ!」
もう1体のネクロマンサーが放った炎の波を、オルフェの放った一回り大きい波がネクロマンサーごと飲みこみ焼き尽くす。
「詠唱も幻術魔法で隠してたってわけね。それに関してだけはあたしより上ね」
1度キコリのドラゴンロアが幻を破った。だからこそ、そんなすぐのタイミングでの2度目は無いと思わせた。
ネクロマンサーが出てきて対話の姿勢を僅かながらに見せたのも、もう幻術で隠れているものはないという思考を強化するためのものだったのだろう。
しかし実際には違った。ネクロマンサーは自分が1人だと思わせ、実際には隠れた2人と共に魔法を行使していた。
分かってみればあまりにもくだらないが、オルフェをも騙す幻術魔法の使い手という事実が、あるいは何かの高度な技を使っている可能性を考えさせてしまった。
「キコリ、加勢しなくていいのか」
「要らないさ」
斧を下ろしたキコリは、ふうと息を吐く。そう、単純な魔法戦でオルフェに助けなどいるはずもない。
オルフェと残る1人のネクロマンサーの魔法の撃ちあいは、オルフェ優先で進んでいた。
「ちょっとプライド傷ついたわ。だからまあ……派手に死になさい」
「ま、待て! 話し合おう!」
「無理。死ね。グングニル」
オルフェの手の中に輝く槍が生まれ、ヒイと声をあげるネクロマンサーへとオルフェは投擲する。
上空で起こる大爆発はネクロマンサーを跡形もなく消し飛ばして……ドドが「妖精は怖いな」と呟くのをキコリは曖昧に同意しながら見ていた。






