紫色の草原
「こんな所に道が隠されてたなんてな」
「分かってみると単純なだけにムカつくわね」
つまり、ストーンドールは囮だったのだ。ソイルゴーレムの存在を誤魔化し、もしソイルゴーレムの魔力に気付かれても「ストーンドールが生まれるくらいだしおかしくないな」と納得させる為のものだ。
オルフェの場合は「本物の環境」を知っているだけに、違和感は感じてもそこまで気付かなかった。
むしろ場の魔力が低いな……と、そうとすら考えていたのだ。
しかし、これで明らかになったこともある。
「結構めんどくさそうな相手よ。気をつけていくわよ」
「ああ」
「ドドも承知した」
それについては、キコリも分かる。
ネクロマンサー……死体を操る相手だと思っていたら、どうにもゴーレムも操ることが出来る。
それはつまり、相手のとれる手の多彩さを意味している。この後何が起きてもおかしくはないのだ。
だが、それでも行くしかない。キコリたちは下へと続く道を降りていくが……幸いにも、同様に道が塞がれている場所はない。
山を下りていく中で幾度かの戦闘を経て、やがてキコリたちは地上まで下りていく。
およそ半日がかりの強行軍だったが、落下の危険性のない場所まで辿り着けたのは良いことであるだろう。
月明かりの下で見渡す地上の光景は、一言で言えば紫色の草原だった。
気味の悪い紫色をした草が一面に生え、所々におかしな成長の仕方をした木々の姿が見える。
一体何があればこうなるのか。山の上からでは見えなかった光景に、3人ともそれぞれ嫌な顔を隠せなかった。
「……気持ち悪っ。此処で野営する気ないわよ、あたし」
「同意だ」
「ドドも同意する。毒か何かがありそうだ」
頷きあうと、再び山を少しだけ登り、野営の準備を始める。
といっても料理をするわけでもなく保存食を出す程度だが、座って食事をするだけでも疲労感は大分薄れるものだ。
「それは人間の保存食か」
「ああ。オルフェの好みに合わせてるから木の実が多いけどな」
「ドドのと少し交換してほしい。穴蛇の干し肉だ」
オルフェが「うえっ」と言っているが、キコリとしては然程気にするものでもない。
蛇など、キコリの故郷ではよく食べるものだからだ。
とはいえ干し肉なので、かじってみても懐かしい味かは分からないのだが。
「結構いけるな」
「ドドも木の実は気に入った。食べた事のない味だ」
「アンタは蛇食ってりゃいいでしょうが。木の実はあたしのよ」
そんなことを言い合いながら、キコリたちは夜が過ぎるのを待つ。
月明かりの下で不気味な色を見せる光景は……日が昇ったところで変わるとは、思えなかったけれども。






