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キコリの異世界譚  作者: 天野ハザマ


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人間とモンスター

 兜を被ったドドが言えば、キコリはオルフェに視線を向ける。

 何処と言われても、キコリとしてはしらみつぶしにするしかないと考えていた。

 だが、オルフェであれば何か方法を知っているかも、と。そう思ったのだ。


「オルフェ。何か見つける手段ってあるか?」

「ないわよ。片っ端から歩いて探すのよ」


 あたしは飛ぶけど、と言うオルフェにキコリは「やっぱりそうなるか」とため息をつく。

 何事も近道はないというが、これもそうだということなのだろう。


「あー、そういうことらしい。嫌なら同行しなくても」

「何を言う。ドドは同行すると決めた。二言はない」

「……そうか。ならよろしく」

「ああ」


 キコリは「じゃあ、まずは村の反対側に行くか」と歩きだせばドドも「そうだな」とついていく。

 体格も種族も何もかも違う2人だが、すでに気が合っているように見える。

 その姿を見ながら、オルフェは思う。

 キコリがドドに普通に接しているのは性格がどうという問題ではないだろう。

 ドラゴンであるからこそ、他の生物に対する態度が「敵」か「敵以外」かで分かれているというだけの話だ。

 自分達が事実上の頂点なのだから、「敵ではない生き物」に警戒するという事を本能で行わないのだろう。

 勿論、キコリ自身それに気付いてはいないはずだ。気付いていれば、自分で修正している。キコリはそういう性格だ。

 オルフェが気付いたのだって、オルフェがキコリをしっかりと見ているからだ。そうでなければ「お人よし」程度で済ませていたはずだ。


(強くなるはずのドラゴンとしての特性が、キコリに大きな弱点を作ってる……でも、それを指摘なんかできない。すれば……キコリがどう傾くか分からない)


 ドラゴンの本能などというものは、簡単にどうにか出来るものではない。

 だがそれをどうにかする為にキコリが「適応」した時に、下手をすれば猜疑心の塊のような性格に変貌する可能性すらある。

 イルヘイルの時に、すでにそのような兆候はあったのだ。それを悪化させれば、キコリは間違いなく「人間の敵」に傾くだろう。そういう確信があった。

 オルフェ自身はそれをどうとは思わないが、キコリがそれを望まないと分かっている。

 だから、オルフェは何も言わない。普段通りにキコリをサポートしていくつもりだった。


「ちょっと待ちなさいよ。相棒置いていくつもり!?」

「ハハ、そんなわけないだろ」

「ドドは仲間を置いて行かない。信じろ」

「信じてほしけりゃ行動で示しなさいよ」

「オルフェは行動で示したのか」

「そうよ」

「そうか……」


 そんな事を言い合うオルフェとドドを見てキコリは楽しそうに笑う。

 人間とモンスター。キコリの中での境目は、すでになくなっている。

 それは今のところ、何ら不都合さを見せてはいない。

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