それでもし拒絶されても
キコリが世界樹の葉を持ち帰ってより、数日後。
見る人間が見ればアリアの完治は分かるらしく、当然のように騒ぎになった。
冒険者ギルドの壁に世界樹の葉の採取依頼が複数並んだのは序の口。
恐らくそうだろうと当たりをつけたのか、キコリへも指名依頼が飛び込むようになった。
……しかし、そのどれもキコリは受けていない。
「まあ、受けられるはずがないんだよなあ」
「そりゃそうでしょ。アレをもう1回やりたくはないわよ」
アリアの家で、キコリとオルフェはそう溜息をつく。
ユグトレイルの性格上、もう1枚葉をくれと言って怒るかどうか、かなりギリギリだ。
大分寛大にも見えたが、あれはあれでドラゴンなのだ。
自分の依頼を果たしもせず人間の使いっ走り……事実がどうかはさておいて、そう思われることをしていればどうなるか。
それ以上に「2枚目が欲しければもっと厳しい条件を」などと言いかねない。
ユグトレイルの「エゴ」が何処にあるか、それが分からない以上は下手に突くのは拙いし、そもそもキコリは取りに行くつもりもない。
「ま、俺たちが旅に出てる間に解決するだろうけど……それより問題はアレだよな」
「あー、世界樹の葉の効能?」
「ああ。まさか……美肌がどうこうって話になるとはな」
世界樹の葉。凄まじい魔力を秘めたそれは万能薬としても知られているが、その「万能」の効果に肉体的機能に関する諸々が含まれているのは想像に難くない。
それは所謂老化に伴う諸々も含まれており……キコリもオルフェも気付かなかったが、アリアの肌はちょっと凄いくらいに良い状態になっていたらしい。
そして一部の文献では不老の妙薬としても知られている、となれば騒ぎになるのも致し方ないのだが。
「それで限界超えて生きてる人間がいるなら分かるけど。居ないんでしょ? そういう人間」
「らしいな。つまりまあ……美容程度に収まる話ってことだよな」
「そうなるわね。本気で人間やめるとなれば、それこそアンタみたいな話になると思うわよ?」
「まあ、そうだよな」
キコリは人間をやめてドラゴンになった。その影響はまだ常識的な範囲に収まっているように見えるが、今後どのようになるかは分からない。それこそ、老化のようなものがキコリにあるかどうかも分からない。
そういう意味では、いずれ人間の町には住めなくなるだろう。まあ、その選択を後悔はしていない。
「だから、そろそろアリアさんに言わなきゃいけないと思うんだよ」
「人間やめたって?」
「ああ。それでもし拒絶されても……それはそれで、諦めもつくしな」






