新しい武器を買おうかなって
冒険者ギルドに入ると、キコリはいつもの受付嬢を見つける。
丁度空いている時間帯らしく暇そうにしているその受付嬢のカウンターに行くと、キコリは笑う。
「こんにちは、イレーヌさん」
名前を呼ばれた事に受付嬢……イレーヌはちょっと驚いたような表情をすると、微笑み返す。
「はい、こんにちはキコリさん。今日はもうあがりですか?」
「結構稼げましたので、換金しようかと」
「魔石ですね。拝見します」
キコリが出したのは角兎の魔石が2個、ゴブリンの魔石が5個、オークの魔石が1個。
その最後に転がり出たオークの魔石に、イレーヌはギョッとした表情を見せる。
「え? この大きさは……キコリさん、一体何を倒したんですか?」
「オークです。武具店のミルグさんからも報告するよう言われたんですが……このオークは英雄門に比較的近い場所でゴブリンを殺してました」
イレーヌはキコリの言葉を反芻するように黙り込み、やがて「そうですか……」と答える。
「他に変わった事はありましたか?」
「いえ、特には」
「恐らく興味本位で出てきた個体だとは思いますが、こちらでも調査します。ご報告ありがとうございました」
「いえ……」
「では、買い取り額ですが17000イエンです」
「オークのが10000イエンってことですか?」
「その通りです。大きな魔石は小さな魔石を集めるよりも価値があるという事です」
なるほど、それならば強い冒険者程奥に行くのもキコリには納得できた。
しかし今のキコリではオークを1体倒すよりもゴブリン10体を倒す方が現実的ではあるだろう。
「壁には、様々な依頼も貼ってあります。実入りの良いモノもありますので、定期的に確認することをお勧めします」
「ありがとうございます」
会釈して、キコリは壁の依頼……を見る前に階段を下りていく。
そうすると、暇そうにしていたアリアがキコリを見つけてパッと微笑む。
「あ、キコリ。お帰りなさい」
「こんにちは、アリアさん」
「今日は死にかけてないですね。よしよし」
「オークに会ったから、死ぬかとは思いましたけどね……」
「オークゥ!? いや、でも生きてるから無事に逃げられたってことですかあ」
「倒しました。運良くですけど」
そう報告するキコリにアリアはポカンとした表情を浮かべ……立ち上がり、キコリの身体をペタペタ触る。
「うん、見て分かる怪我は無さそうですけど……」
「はい。それで、ミルグさんにも勧められて新しい武器を買おうかなって」
「それがいいかもしれませんね。その斧は私も気になってましたし」






