表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キコリの異世界譚  作者: 天野ハザマ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/837

自信もって薦められるもんじゃねえが

「鎧……確かにそれがあれば……」


 鎧があれば、ゴブリンに刺されてもポーションが要らなかったかもしれない。

 鎧があれば、もっと大胆に攻められるかもしれない。

 そう考えると、鎧は確かに良い選択肢であるようにキコリにも思えた。

 しかし、アリアが「うーん」と声をあげる。


「確かにそれが無難ですけど。キコリさんの場合、部分鎧から揃えていったほうがよくないですかね?」

「部分鎧ですか?」

「そうです。たとえばコレとか」


 言いながらアリアが差し出したのは、レッグガードだ。

 足を護る防具であるレッグガードはなるほど、確かに重要であるようにも思えるが……。


「前に出て戦う冒険者にとって一番守らなきゃいけないのは手と足です。手を失えば攻撃力を失い、足を失えば避けるも逃げるも不可能になる。同じ理由で肩も大事ですね」

「頭はいいんですか?」

「あはは、そんなもの。頭を狙える奴なら兜の隙間の目だって狙えますし、不注意で頭をやられる雑魚なら死ねばいいですし。強い敵相手なら兜被ってたって兜割りされますから。最後でいいんです、そんなもの」

「それは結構過激な意見のような……」

「まあ、同意ではあるなあ。鎧で固めりゃいいってもんでもねえし、兜が必要ってのは『避けられない事情がある』って奴だけではある」


 うんうん、と頷く店主にキコリは思わず「そうなんですか?」と聞いてしまう。


「おう。そりゃあ普通に戦っても兜が必要な場面はある。だがな、本来はそういう状況に追い込まれた時点で負けてるんだ。人数で負けてるか自力で負けてるか……そうならないようにやっておくのが腕であって、鎧で固めるのは『そういう役割』を求められているって意味もある」

「バックアタックや不意打ちで後衛がやられたって話もありますけど、そんな事を許すのは能力不足の証であり『相手の方が強かった』っていう真実の証拠です。それを補うのが鎧であり兜であるってことですね」


 たとえば騎士などは鎧や兜を必要とするが、あれは「そういう役割」を求められているからだ。

 真正面から戦い武威を示す必要があるからこそ、全身に鎧兜を纏わなければならない。

 真正面から敵を打ち破る事こそが使命であり、だからこそ騎士はフル装備を前提にした技術を発展させ続けている。

 さて、それを前提にしたうえでキコリがどうかというと……。


「確かに、そうですね……でも俺、弱いから。最低限でも守らないと死にそうな気がします」

「ふむ、なるほどな。となると……うーん、難しいな!」


 言いながら店主が並べたのは鉄製の部分鎧だった。

 胸と背中、肩と腕、そして肘関節に足関節、そして足部分を護る鎧。


「ま、これで割引して1万イエンだな。中古の寄せ集めだし品質としちゃあ、自信もって薦められるもんじゃねえが……」


 言いながら店主が視線を向けるのは、飾ってあるチェインメイルだ。


「本当はアレもつけてやりたいとこだが、1万イエンじゃあなあ。これでも結構大サービスしてるくらいだ」

「うん、でも良いチョイスじゃないですか? どうです、キコリ?」


 アリアに問われて、キコリは迷わずに1万イエンを取り出し渡す。

 アリアの勧めでもあるし、キコリとしても目の前でピカピカと光る防具は……実にカッコよさげに見えたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍版『キコリの異世界譚』発売中!
『キコリの異世界譚』1巻書影
コミック『キコリの異世界譚』も連載中です!
『キコリの異世界譚』1巻書影
― 新着の感想 ―
[一言] 金属なんだ…… 皮じゃないんだ…… 重くて、身動き出来なかったりして(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ