そうじゃないだろ
「オオオオオオオオオオオオオ!」
大巨人が腕を振るう。放たれる土塊が刃となり、刃の雨が降り注ぐ。
「こ、の……! ナメんじゃないわよ! フレイム……」
「オルフェ! 俺のすぐ側に!」
「へっ!? う、うん!」
オルフェがキコリの近くへ飛ぶと同時、キコリは両手の斧を高速で振り回し自分達に刺さる刃だけを弾き返す。
「ひえー……」
オルフェとしては素直に「凄い」と思える斧捌きだが……キコリは全く気にした様子もなく、大巨人を見上げる。
「ゴーレム、か」
「否」
初撃を的確に対処されたことで冷静になったのだろうか。
キコリの呟きに、大巨人はそう返してくる。
「否、否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否! 俺はドラゴンだ! 俺こそがドラゴン! そうだ、俺は!」
放たれる圧力に、オルフェの心が折れかける。
ドラゴンではないとキコリは断言した。
だが、この圧力は……ドラゴン以外のなんだというのか?
「いいや、お前はドラゴンじゃない」
そしてキコリは……オルフェが驚くほど冷静に、そう断言した。
まるで確信があるかのように……いや、確信があった。
「お前は、ドラゴンじゃない」
「貴様……!」
「ヴォルカニオンは、まだドラゴンじゃなかった俺のドラゴンクラウンを見抜いた。あの時は、それを疑問にも思わなかった。そういうものだと流してた」
「何を、言っている」
「分かるんだよ」
「何を言っている、貴様! ヴォルカニオンの眷属如きがよくも!」
「それだ」
キコリは、大巨人に斧を向ける。
「こうして相対すると分かる。お前はドラゴンクラウンを持ってない。分かるんだよ、同族を名乗っても、違うって直感で分かる。そしてお前は俺が分からない。だから、お前はドラゴンじゃない。ドラゴンを知ってるだけの、別の何かだ」
眷属。それはキコリの知らない言葉だ。
きっとドラゴンにはキコリに理解できていない力が数多くあるのだろう。
そんなものを知っているということは、大巨人はドラゴンの誰かに深く関わる何かなのだろう。
そして、それは。
「眷属……だったか? お前、それなんだろ? それで全部説明がつく」
オルフェがドラゴンと勘違いして脅えている理由。
大巨人が、キコリを狙った理由。
「迷宮化で引き離されてきたんだろ。主人から遠く離れて、それでどうしてドラゴンを名乗ったかまでは知らないけどさ」
「き、さまあああああ!」
大巨人の振るった腕から放たれた土塊が凝縮し、巨大な剣となって飛ぶ。
キコリはオルフェを掴んで、横に跳んで回避して。
「俺を喰うとか町を喰うとか……なんか違うんだよな。ドラゴンらしさが微塵もない。そうじゃないだろ、ドラゴンは」






