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お前を殺す

「え……」

「なっ……!」


 キコリとオルフェは振り向き、見上げて。

 その巨大さにキコリは思わず目を見開く。

 今まで屠ってきたワイバーンとは全く別物としか言いようがない、その巨大さ。

 放つ威圧感もくらべものにはならない。

 まさか、ドラゴン。いや、違う。本物を……ヴォルカニオンを知っているから分かる。

 これは、ドラゴンではない。けれど、ドラゴンのようだとは思う。

 ヴォルカニオンほどの絶望感は感じない。

 だがそれでも、絶望を感じる程度には強い。

 不意打ちの1つや2つしたところで、ひっくり返せそうにはない実力差を強く感じる程度には「コレ」は強い。

 しかし、しかし。コレは何なのだろう?


「グレートワイバーン……嘘、でしょ……?」

「俺を知っているか、羽虫め」

「オルフェ……知ってるのか?」

「ワイバーンの中でもドラゴンに近いモノ。でも、ドラゴンではないモノ。こんな場所にいるはずのない奴よ……!」


 迷宮化の影響であることにキコリはすぐに思い当たる。

 もっと奥に居るべきモノが、迷宮化の影響でこんな場所に移動してしまっていたのだ。

 ……ということは、妖精の森が焼かれたのは、まさか。

 

「そうか。妖精の森を焼いて初めて迷宮化に気付いたんだな……!」

「迷宮化、か。確かに俺達の知らぬ法則が領域を覆った。そのせいで貴様等のようなゴミが我が物顔で動き回る。実に不快なことだ」

「ハッ! そのゴミに配下散々やられたくせに!」


 オルフェが言い返せば、グレートワイバーンは含み笑いを漏らす。


「あんな雑魚共、いくらでも増える。それで……どうだった?」

「何がだ」


 キコリが斧を構え言い返せば、グレートワイバーンはその顔をキコリにも分かる程に嫌らしく笑顔の形に歪める。


「このまま帰れると……考えただろう? コソコソ動き回って、ザコ共を倒して。凱旋気分だったか? 逃がすはずがないだろう。殺さないはずがないだろう。フハハ、ヒハ、ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」


 ビリビリと響く声と、そこから放たれる濃厚な殺気。

 震えるオルフェに気付き、キコリは庇うように立つ。

 大丈夫、怖くはない。ヴォルカニオンの威圧にすら、適応したのだから。


「それなら」

「ん?」

「それなら、お前を殺す」


 そう宣言するキコリを、グレートワイバーンは嘲笑う。

 出来るはずがない。実力差は測るまでもない。

 ワイバーンにも隙をついてしか勝てない者が、グレートワイバーンに勝てるはずもない。

 それでも、キコリは斧を握る手に力を籠めて。

 グレートワイバーンへの殺意を高めていく。

 効かないとは分かっている。だがそれでも、ここ一番の時には必ずそうしてきたから。


「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ‼」


 響く。

 キコリのウォークライが響く。

 お前を殺すと。絶対に殺してやると。

 グレートワイバーンへの殺害宣言が、元妖精の森に響き渡った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ドラゴンっぽいもの同士がやりあうと生き残った方がよりドラゴンっぽくなったりするのでしょうかね。 とりあえず頭良くなるといいな
[一言] ドラゴンの出来損ないvsドラゴン未満 ファイッ!
[気になる点] …グレートワイバーン、美味しいのかな?(なろう脳)
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