表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
174/837

少しばかり経験あるぞ

 どうどう、と流れる滝の音。

 川の水は澄んでいて、魚が泳いでいるのが見える。

 そして……キコリたちの背後の、今通って来たばかりの転移門で確かに川は途切れているのに、何の問題もないかのように川は流れている。

 あれは何処に流れているのか。魚があの転移門を越えたら「何処」に行くのか。

 ダンジョンというモノの持つ法則の不思議さは相変わらずだが……。


「此処が、ワイバーンの住み家なのか……?」

「たぶんね。あのトカゲどもの好きそうな場所じゃない」


 確かに、自然豊かで食事になりそうなモノも豊富にあるだろう。

 だが……いや、だからこそキコリには1つ分からないことがあった。


(なんでアイツ等は……妖精の森をあんな徹底的に焼いたんだ?)


 此処がワイバーンの住み家であるならば、自然を無闇に焼いてはいけない程度の知能はある。

 なのに、どうして妖精の森を焼きに来る必要があったのか?

 食糧問題、というわけではないだろう。

 妖精が木の実を好むのは、あの時色々食べられたから知っている。

 対して、ワイバーンが木の実をもいで食べるとも思えない。

 なら食糧問題がひっ迫して妖精の森に侵攻してきたわけではない。

 単純に妖精の森を焼き払うために来たとしか思えないのだ。

 だが、それは何故なのか?

 分からない。分からないというのは、非常に気持ちが悪い事だ。


「キコリ。何ぼーっとしてんのよ」

「オルフェ」

「何?」

「ワイバーンは……妖精と仲が悪かったのか?」

「ほとんど関わりもないわよ。『隣』に来てたってのも、あの時初めて知ったくらいだもの」

「だよな……」

「でもどうして?」

「ワイバーンが森をあんなにした理由が分からない。餌を探すのに木が邪魔だって焼くタイプでもなさそうだ」


 そう、周辺には妖精の森同様に木が生えている場所もある。

 ワイバーンが木が邪魔だと焼く程度の知能しかないなら、あちこちに燃えカスがあってもおかしくないはずなのに、だ。

 オルフェは、そこで言われて初めて気付いたとでもいうかのように周囲を見回して。


「あー……つまりアレね。あたしたち、ケンカ売られてたんだわ」

「やっぱ、そういう結論になるよな」

「よし。此処全部焼きましょ」

「いや、それはどうかと思う」


 今にも魔法をぶっ放しそうなオルフェを押さえながら、キコリは説得の言葉を考える。


「そんなことして連中が一斉に向かって来ても勝てないだろ」

「じゃあどうするってのよ」

「そりゃまあ……」


 キコリは此処から見える景色を眺めながら、ハッキリとそれを告げる。


「……ゲリラ戦だろ。俺、少しばかり経験あるぞ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍版『キコリの異世界譚』発売中!
『キコリの異世界譚』1巻書影
コミック『キコリの異世界譚』も連載中です!
『キコリの異世界譚』1巻書影
― 新着の感想 ―
[良い点] 妖精自体が餌ということもなさそうでしたね。 奇襲で飛ぶ前のワイバーンを少しずつ仕留めていけるか
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ