表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
170/837

黄金の呪い

 少し、考えて。キコリはゆっくりと首を横に振る。


「……しません」


 逆らえるはずもない。ドラゴンがそれを望んでいる。

 その言葉の大きさたるや、どれほどだろう?

 そして仕方ないとはいえ、自分がその「強い言葉」を使った事実にもキコリはゾッとする。


「つまり、俺がやったのって……」

「いえ、キコリの報告は『しなければいけないこと』だったと思います」


 アリアはそう言うと、小さく溜息をつく。


「ただ、それによってこの防衛都市に『ドラゴンの影響』が入った。それが今後どういう流れになるのか、全く予想できないです」


 ドラゴンは強い。そのドラゴンが「するな」ということがあるのであれば、当然「しない」がとるべき選択になる。

 だが……それを協定ととるか、抑圧ととるかで……様々なものが変わってくる。

 たとえば将来的に「ドラゴン討つべし」という無謀論が飛び出てこないとも限らない。

 それに、たとえばの話ではあるが。


「ドラゴンスレイヤーの称号を欲しがる馬鹿が出てくる可能性もありますしね」


 おとぎ話では悪いドラゴンを退治した英雄の話などはたくさんある。

 現実としてはドラゴンの討伐など夢見話だが……キコリと話をしたことで「つけ入るスキがある」と考える者が出ない……とは決して言えない。


「でも勝てない、ですよね? そんなのに挑む奴なんて」

「ドラゴンスレイヤーの称号は呪いみたいなものです。輝ける財宝に見えて誰もを引き付けるけど、手に入れようとする者を滅ぼす呪い。そう知っていてなお、手に入れたがる者が後を絶たない。そんな、黄金の呪いです」

「黄金の、呪い……」

「でも流石に防衛伯が禁止したモノを狙おうとする奴はしばらくは出ないでしょう」


 それを聞いてキコリは安心したように息を吐く。

 次に会う機会があった時に「本当に伝えたのか」と怒られたくはない。


「とにかく、今日はもう家で休んでてください。疲れたでしょう?」

「はい、ありがとうございますアリアさん」


 キコリは階段を登っていき、オルフェもその後を追っていくが……途中で振り返る。


「……何か?」

「確かにドラゴンは狙わないかもね。でも『代替品』は狙われるんじゃないの?」

「どうでしょう。私には何とも」

「喰えない人間ね。キコリに聞かせたくなかったの?」


 アリアは、無言。オルフェはフンと鼻を鳴らすと上の階へと飛んでいく。

 そう、オルフェの指摘は正しい。

 ドラゴンを倒せない。なら、自分がドラゴンスレイヤー足り得ると……そんな自尊心を満たす為にワイバーンを狙う者は現れるだろう。

 そしてそれを知れば、キコリはオルフェの為にワイバーンに挑みに行くかもしれない。

 アリアとしては……それは、止めておきたかったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍版『キコリの異世界譚』発売中!
『キコリの異世界譚』1巻書影
コミック『キコリの異世界譚』も連載中です!
『キコリの異世界譚』1巻書影
― 新着の感想 ―
[良い点] ドラゴンを正しく認識したらワイバーンとかもうただのヒハキトビトカゲやん・・・
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ