表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
164/837

貴様は我にそう望むのか

「聞いて、くれるのか?」

「聞かん理由があるのか?」


 訳が分からない、といったような表情をしているヴォルカニオンに、キコリは気が抜けたようにハハッと笑う。


「いや、すまない。正直、もう話は終わったと言われるかと思ってた」

「相互理解が足りていないようだ」

「会ったばかりだしな」

「くくっ、その通りだ」


 一通り笑いあうと、キコリはヴォルカニオンに先程言おうとしていたことを口にする。

 ヴォルカニオンならば分かってくれる。そう思えたからだ。


「ついこの間、人間が『汚染地域』と呼んでるこの場所に、大きな変化があったんだ」

「ああ、理解している。ゴブリンどもが紛れ込んできたのもそれだろう」

「人間はこれを『迷宮化』と呼んでる。今まで理解してたルートが、全部滅茶苦茶になったんだ」

「うむ。それで?」

「この場所は今、人間の住む場所から相当近くなってる。此処に人間が来る可能性は大きいと思う」


 だから、とキコリは言う。


「そいつらが攻撃してこなかったら、でいい。見逃してやることはできないか?」

「出来ん」


 だが。ヴォルカニオンはキコリの予想に反して即座にそう断言する。

 何の迷いもない一刀両断だった。


「……え?」

「出来ん。此処に紛れ込んだ人間には例外なく我が炎をくれてやろう」

「え、あ、いや! 攻撃してこない人間だけでいいんだ! それなら俺が偉い人に伝えて」

「出来んと言ったぞ、キコリ」

「なんでだよ!」


 叫ぶキコリに、ヴォルカニオンは明確な拒絶の感情を叩きつけてくる。

 風が吹いたかのように錯覚するその威圧に、背後でオルフェが震えているのが理解できた。


「いいか、キコリ。たとえば貴様が人間の権力者と交渉して、我に攻撃させないという確約を得たとしよう」


 だが、とヴォルカニオンは続ける。


「交渉して『攻撃をやめていただく』のか? この我が? 『攻撃しなければ襲ってこない』と舐める連中を見逃せと? 我に、その侮辱に理不尽に耐えよと。キコリ、貴様は我にそう望むのか?」

「でも、それだと人間と際限ない戦いになる可能性だって! ヴォルカニオン、アンタは俺より頭の良いドラゴンだろう!? 争わない事の大切さだって分かるはずだ!」

「それで我が譲歩する必要性が何処にある?」

「それ、は」

「分かるはずだぞ、キコリ。お前は愚か者ではない。我にとって人間をどの程度に考えているかをな」


 言いながら、ヴォルカニオンはキコリの目の前で凶悪な牙の並ぶ口を開いてみせる。


「我は貴様にこうも言ったな? 自己の立ち位置を常に正確に把握しろ、と。キコリ、貴様はどの位置に立つつもりだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍版『キコリの異世界譚』発売中!
『キコリの異世界譚』1巻書影
コミック『キコリの異世界譚』も連載中です!
『キコリの異世界譚』1巻書影
― 新着の感想 ―
[良い点] 迷宮化の黒幕はドラゴンや他の存在らに人間との摩擦を起こさせたかったのかな。 ドラゴンの手前で門番キコリとしてしばらく恨みを買ってでも無謀者たちを押しとどめるとかできるかな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ