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妖精は一流の魔法士に匹敵する

「ああ、ありがとう」


 キコリは、オルフェにそうお礼を言って。

 注意深く、辺りを見回す。

 深々と降る雪は、もうイエティの死骸を覆い隠そうとしている。

 焼け焦げた白い毛皮は中々隠れないが、元の毛皮の色であれば雪の中に埋没するのはすぐだろう。

 だが、それだけではない。あのイエティは。


「アイツは……雪の『中』に潜ってた。つまり、長時間雪の中に居ても問題がない」

「そうでしょうね」

「問題はいつから潜んでたかだ。雪の中に穴を掘って潜んでたのか?」


 この雪の降り具合であれば、それも可能だろう。

 雪の中に長時間埋まっていても平気なら、相手を油断させるには最適だ。

 コボルトが穴の中に居たように、イエティは雪の中に住むモンスターだと考える事もできるが……。

 いや、そういう狩りの仕方だと考えたほうがいいだろう。

 それを前提にしたうえで、此処では……。


「気を抜かなくてもやられるな。もっと地面に違和感を感じられたらいいんだが……」


 正直、無理だとキコリは思う。

 雪の上を歩くザクザクという音。その足音がイエティにキコリの居場所を知らせる事はあっても、イエティの襲ってくる前兆がキコリには分からない。

 足音がする時点で、キコリは圧倒的に不利。


「せめて、空を飛べれば……」

「自分で飛べばぁ?」

「出来たらやってるよ」


 試しにオルフェに視線を向けてみれば、そんなつれない反応が返ってくる。

 まあ、オルフェに運んでもらうというのはそもそも無理だろうが……。

 ともかく、現状打てる手でやっていくしかない。

 可能な限り足音を立てないように……いや、無理だ。

 雪は鎧を着込んだキコリの足によってザクッと無慈悲に音を立てる。

 こればかりは、もうどうしようもない。

 ならばと、可能な限り早足で歩いて。

 オルフェはその上空を気楽な感じで飛んでいく。

 しかし、その余裕っぷりが逆に頼もしいとキコリは思った。

 妖精は一流の魔法士に匹敵する。その噂は本当だということだ。


「……あれは」


 深々と降る雪のカーテンの向こう。

 何かが滑るようにこちらへやってくるのを見つけて、キコリは斧を両手に構える。

 1、2、3。

 3体の巨大なワニのような生物がこちらへ滑るように走ってくる。

 白いワニ。スノウアリゲーターだ。


「ミョルニル!」


 両手の斧に電撃が宿り、キコリは投擲する。

 1本、2本。飛翔する斧はスノウアリゲーターにぶつかり、電撃を流し込む。

 ……だが。


「弾かれた!?」


 斧は表皮で金属音のような音と共に弾かれ、電撃はその表皮を滑って流れていく。

 ミョルニルが、完全に封殺されている。

 その事実に……キコリは、冷や汗を流した。

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