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信用できるの?

「冒険者の道」は、キコリが今まで見たことがない程に人が行き交っていた。

 ワイワイと雑談などをしながら進んでいく冒険者たちの姿には緊張感らしきものはなく、キコリもこの状況で対処できない「何か」があるならば、何があっても生き残れないだろうな……という気分になっていた。


「なんか随分盛況なのね」

「探索がお金になるからだろうな」


 そう、今なら誰よりも先んじて探索をすればするほど金になる。

 先んじることはできなくても、他より詳しい地図を作れば冒険者ギルドからの評価も上がる。

 加えて、迷宮化により今までとは状況が全く変わっている。

 ならば今まで見つからなかった物も見つかるかもしれない。

 そしてそれは、大抵金になるのだ。


「……ってところだと思う」

「お金ってアレでしょ? 今日交換してたキラキラのやつ」

「そう、それ」

「やっぱアレ? 金とか銀だから価値がある的な?」

「難しいこと聞くな……」


 確か金本位制とか管理通貨制とかあったはずだが、この世界というかこの国が「どういう制度」かキコリは詳しく知らない。

 この世界の通貨の単位は「イエン」であり、金貨にも銀貨にも銅貨にも、どれが幾らであるかの刻印がされている。

 何処かに造幣局があるのは間違いないだろうが……。


「正直、俺もよく分かんないな」

「ふーん」


 オルフェはそれで興味を失ったようだったが……すぐに不機嫌になっていくのが分かる。

 まあ、当然だろう。先程から視線がチクチク刺さってくる。

 しかもその視線の多くはオルフェに注がれている。

 ボソボソと囁かれる言葉は、まるで品定めしているかのようで。


「ちょっと急ごうか、オルフェ」

「そうね」


 キコリとオルフェは小走りで人の中を抜け、そうして空間の歪み……ダンジョン化により「転移門」と名付けられた場所へと到達する。

 すでに夜となっているせいか、その場所にはそれなりの数の冒険者が野営しているのが見える。

「俺たちも今日は此処で休もうか」

「いいけど。信用できるの? 他の人間」

「うーん……」


 正直、即答は出来ない。

 あの安宿での騒動を思えば、他人の荷物に手を出す冒険者は一定数以上存在している。

 朝の「妖精使い」騒ぎを思えば、オルフェに手を出す人間がいないとも言い切れない。


「正直、半々だとは思う。寝ずの番をすればどうにか」

「馬鹿じゃないの?」

「そんな事言われてもな……」

「テリトリー、セット」


 オルフェが何かを唱えると、キコリたちを中心に半円状の輝きが広がっていく。

 何やら周囲がそれでザワつき始めるが、それはキコリも同じだ。


「オルフェ、これ……なんだ?」

「獣避けみたいなものよ。悪意ある者を弾く、弱い結界って感じかしらね」

「へー……」

「これで安心できるでしょ?」

「ああ。オルフェって凄いな」

「フン! 分かればいいのよ。じゃあご飯よ。あの黒い干した果物寄越しなさい!」

「干しブドウな。あまり食べ過ぎないでくれよ」

「考えといてあげるわ」


 キコリの渡した袋を開けて干しブドウを掴み出すオルフェに、キコリはクスリと笑って。


「何か文句あるの」

「何もない」


 即座に視線を逸らすのだった。

あけましておめでとうございます。

2022年、今年もよろしくお願いいたします!

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