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どうでもいいこと

 そして、夜。

 寝ているキコリをそのままに、テーブルを挟んでアリアとオルフェが向かい合っていた。


「……良く寝てますね。気が抜けたんでしょう」

「軟弱よね。善良ではあるんだろうけど」


 キコリのこの数日間の冒険について聞いて、アリアは「よく生き残った」としか言いようがなかった。

 コボルトの大群に妖精、そしてワイバーン。

 どれもキコリには辛いものであったはずだ。

 一部ちょっと内容に何か隠してそうな箇所はあったが、特に問題はない。

 ないが……装備が全部切り替わって荷物を失くしていたのは、流石に驚いた。

 ワイバーンのせいとキコリは言っていたが、まあ仕方のないことだろう。


「一番驚いたのは貴方のことです、オルフェさん」

「ふーん。この蜂蜜美味しいわね。もっとないの?」

「ないです。高いんですよ、それ」

「あっそ」


 つまらそうにスプーンで蜂蜜の瓶をキンキンと叩いていたオルフェだが、そのスプーンもポイとテーブルの上に投げてしまう。


「キコリの知り合いだっていうし、この蜂蜜の分だけ会話してあげてるけど。心得違いするんじゃないわよ」

「だとしても、妖精と『会話』が出来るのは驚きました」

「そりゃそうよ。会話する価値があると認めてないもの」

「そんな貴方がキコリと組んだのは、ワイバーンの件だという話ですが」

「間違ってないわよ。ワイバーンどもはぶち殺す。その為にはキコリと居て人間を利用するのが一番だわ」

「まるでキコリが人間じゃないみたいに言いますね」

「人間よ、あんたたち基準ではね」


 その一言で、キコリが何故気に入られたかをアリアは察する。

 要するに、キコリの中に「妖精基準では人間ではない」何かがあったのだ。

 その何かが「何」であるかまでは分からないが……。


「それで? こんな問答する為に蜂蜜寄越したってわけ?」

「いえ。貴方がどういう立ち位置でキコリと一緒にいるのか知りたかったんです」

「互いに利用しあう関係よ。これで満足?」

「ええ、満足です」


 大体、アリアの確認したい事は確認できた。

 このオルフェという妖精は、キコリに対して親愛の情に近い何かを抱いている。

 それが言語化しない程度には弱いようだが……少なくとも、キコリの敵ではない。


「今の私では、キコリと一緒に行けません」

「でしょうね」

「だから、よろしくお願いしますね」

「人間にお願いされる謂れはないわよ」

「それでもです。私がこう言っていた、ということだけ覚えて頂ければ」

「もう忘れたわ」


 そう言い捨てると、オルフェは部屋の隅に置いてあったキコリの鎧の近くに飛んでいき、兜の中に潜り込む。


(……死んだミミックから、でしたか。でもあの様子を見ると、ひょっとして……)


 まあ、どうでもいいことだ。

 アリアはそう思考を打ち切ると蜂蜜の瓶とスプーンを片付け、布団の中へと潜っていった。

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