手伝ってもらうわよ
「……なんだこれ。マジックアイテムってことでいいんだよな?」
「思いっきりマジックアイテムでしょ? ねえ、名前つけたの?」
「えーとね、ドラゴニアンメイルとー!」
「ドラゴニアンアクス!」
「ねー!」
「だってさ。よかったわね?」
どうやらキコリに合わせて作ってくれたらしいことはよく分かる。
「本当にありがとう」
「えへん、有難く思えよー!」
「力作だぞー!」
「ねー!」
そう言って妖精たちは何処かに「わーい」と飛び去っていくが、オルフェだけはそこに留まったままだ。
「これで帰れそうだな」
「そ、良かったわね」
「街に帰ったら、此処に入らなければ争いにならないことも伝えておくよ」
「ふーん」
オルフェは興味なさそうにふわりと浮かび上がって。
「オルフェ」
「何よ」
「俺は妖精とは戦いたくないけど、他のモンスターとはこれからも戦う」
「好きにすれば? 別に他の連中なんか興味ないし」
「……ああ」
「ていうか、戦うなって言ったらどうするつもりだったのよ」
そう問われ、キコリは苦笑する。
「困った、かな」
「変な奴」
「そうだな」
「じゃ、さよなら。もう会わないだろうけど」
「ああ。さよならオルフェ」
そう言って、キコリは身を翻して。
ゴウ、と。その頭上を何かが通り過ぎる。
そして、降り注ぐ強烈な炎も。
「う、うわああああああああああ!」
「きゃあああああああ!」
反射的にオルフェを引っ張り、庇うようにキコリは蹲って。
炎が、キコリを蹂躙する。
「ぐ、うううううううううう!」
熱い。痛い。そう感じながらも、まだ生きている。
思ったよりもずっと、怪我が少ない。
「オルフェ……大丈夫か⁉」
「バッカじゃないの!? ああ、もう……ヒール!」
キコリの傷が癒え、オルフェが「何か」が通り過ぎて行った方向を睨みつける。
空から降る炎と、飛行する何か。
アレは……まさか。
「ドラゴン……なのか⁉」
「ワイバーンよ馬鹿! フレイムワイバーン! でもなんでこんなところに!」
妖精の悲鳴と、空に向かって放たれる魔法。
フレイムワイバーンが落下していくが、それで終わりではない。
続けて飛来するのは、10を超えるフレイムワイバーン。
それらが森に火を放ち、蹂躙していく。
そしてまたフレイムワイバーンが、更にフレイムワイバーンが飛んでくる。
森が、燃えていく。
「な、なんなの……なんだってのよ! アイツ等、あたし達に何の恨みが!」
「とにかくどうにかしないと!」
「どうにかじゃないわよ!」
オルフェが叫び、ビリビリとキコリの鼓膜を震わせる。
「ぶっ殺すのよ、あの火トカゲどもを全部! 手伝ってもらうわよ、キコリ!」
「ああ、やろうオルフェ!」