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あなたの手

作者: ゆーく

お立ち寄りありがとうございます。

今書いてる連載ものが完結したらしっかり書きたい話を我慢できずにダイジェスト版っぽいもので暴投してしまいました。生暖かい目でご覧いただけたら幸いです。

いつかちゃんとした形で書きます。きっと多分いつかその内必ず、うん。





知らないうちに放り込まれていた場所


何を覚えるよりも先に与えられたのは殺す道具と死体の山


むせ返る臭いや耳障りな断末魔、生々しい感触は受け入れてしまえば慣れるのも早かった


そう、受け入れてしまえば楽になれたから


そう、受け入れてしまえば簡単だったから


何かを壊すことも

何かを殺すことも


難しく考える必要などなかった


気に入らないから殺す



単純だ

そして、なんて簡単なのだろう



殺せば気に入らないもの全てが自分の前から消えるのだから



だから、その願いさえも自分は簡単に叶えてやれる



だが、自分はまだその瞳を見ていたいから


その声で何を喋るのかを聞いていたいから




殺すのはソレに飽きてからでも遅くはない








------------










ー ザーザー



雨が、降る








ー ザーザー



雨の音が、音を消す









ー ザーザー



雨音、だけが…












ー キィ



扉が開く


開いた先から差し込む光と、鉄の匂い



囲われている鉄の檻とは別の、鉄の匂い




ー カチャ



金属と金属が合わさる音


光が反射している銀色の刃と、鉄の檻が合わさる音


その先に垂れる滴は、雨ではなく紅の滴






ー パサッ



鉄の檻に触れる髪


暗闇の部屋に差し込む僅かな明かりに照らされたその髪は白


白い髪の中から覗く瞳は暗闇で輝く紅




サラは己の紫の瞳でその紅を見つめた


自分の銀髪とは違う真っ白な髪を無造作に伸ばしている紅の目を持つ目の前の男



男は檻の中に居るサラの顔を覗くようにその身体を屈める




鉄の匂いが濃くなった





「よぉ」

「……だれ?」


「…可愛い可愛いお人形のサラちゃん?おまえの飼い主は死んだぜ?俺が、殺した」

「そう…」


「お人形ちゃんは俺にどうしてほしい?」



薄い唇を上げて愉しそうに笑う男をサラは見つめる


光を失い無機質となってもサラの飼い主たちを魅了して止まなかった紫の瞳で血に染まっている紅を見つめる





「殺して」

「あ?」

「私を、殺してください」


「いいぜ」

「ほんと?」


「あぁ、じゃあさっさと俺に惚れろ」








ー ザーザー




「はな、して…っ」

「別にいいが、離したらおまえここ出てくだろ。また変態に飾られるか犯されるかされてぇのか?」

「……っ!」

「確実に殺されるかわかんねぇ輩より俺のほうが良いだろ?俺は愛し尽くしたらしっかり殺してやるつってんじゃねぇか」

「あなたも、同類」

「馬鹿言え。俺はちゃんとおまえの意思を聞いてるだろ」

「じゃあ殺して」

「おまえが惚れたらな」

「じゃあ自分で死ぬ」

「俺がさせると思うか?」

「はな、して…っ」

「堂々巡りだな」




ー ザーザー



「ほら、食え。腹減ってるだろ?」

「……いらない」

「腹鳴ってんぞ」

「いらない」

「ったく、おまえ食わねぇなら俺がおまえを食うぞ?」

「ッ、」

「あーあー、可哀想な俺。何が悲しくて惚れた女を泣かせながら無理矢理ヤらなきゃなんねぇんだ。おまえが飯食えば済む話なのに」

「……大っキライ」

「うぐっ、……おまえを殺すのはまだまだかかりそうだなぁ」




ー ザーザー



「血生臭い…」

「あー?いつも通り返り血なんか浴びてねぇぞ?大量だったから臭いがうつったか」

「私のことは殺してくれないくせに」

「そりゃおまえが俺に惚れねぇからだ」

「誰を殺したの?」

「腹立ったそこら辺の奴」

「最低」

「おまっ、いきなり褒めんなよ。なんだ?ちったぁ惚れたか?」

「褒めてない」




ー ザーザー



「なぁサラ、おまえいい加減俺のこと名前で呼べよ」

「殺してくれたら呼ぶ」

「それでどうやって呼ぶつもりだおまえ」

「………」

「おまえ、まさか…」

「……名前、なんだっけ」

「うぐっ、……俺は、今生まれて初めて泣けるかもしれない」

「おめでとう」



ー ザーザー



「はっ!?おま、いま」

「何?」

「何じゃねぇよ!今笑っただろ!」

「?」

「おまえ笑えたのかよ!もっかい!もっかい笑ってみろ‼︎」

「ロキうるさい」

「ぁあ!?」



ー ザーザー



「今から仕事?」

「あ?おー、勝手に外出るんじゃねぇぞ」

「行っちゃダメ」

「……は?」

「殺しちゃダメ」

「ぁあ⁉︎ンだいきなり」

「殺しちゃダメ」

「クッソ!紛らわしいこと言いやがって。で?なんだ突然。おまえ今までンなこと言わなかったじゃねぇか」

「勝手に殺したら二度と笑わない」

「なんだと!?」





ー ザーザー



「なぁサラ、あいつ殺していいか」

「ダメ」

「ンでだよ、あいつクソくせぇぞ。公害モンだ」

「そんなことで殺しちゃダメ」




ー ザーザー



「なぁサラ、あいつ殺していいか」

「ダメ」

「またかよ。今回のは仕事だ、腐った奴らどーでもいーだろ」

「殺さなくても、どうとでもなるでしょ?」

「あー?くっそめんどくせぇ。なんでンなこと…」

「餓死してやる…」

「このやろう!!わーったよ!!!」



ー ザーザー



「飽きねぇなおまえも。ンなもん触って楽しいか」

「ロキの髪好き」

「髪だけかよ」

「手も好き」

「俺は?」

「殺してくれたら好き」

「馬鹿言え、惚れるのが先だ。おまえだけ触ってんな、よこせ」

「切るの?」

「なっ、馬鹿言うな!ンな勿体ねぇことしたら殺すぞ⁉︎」

「じゃあ切る」

「うわっ!馬鹿!ちげぇ!やめろ!」



ー ザーザー



「なぁサラ。あいつ殺してくるな」

「ダメだってば」

「いや、今回は聞けねぇ。あいつおまえを汚ねぇ目で見やがった。殺す」

「そんなことしたらロキの前で髪切ってやる」

「俺がそんなことさせると思うか?」

「思わないから色仕掛けでロキを縛って痺れ薬で動けなくさせて動いたら泣くって脅してから切る」

「恐ろしいなおまえ!?」





ー ザーザー



「………殺す…っ」

「ダメ」

「離せ、サラ。あいつ、おまえに触れやがった。俺が許すわけねぇだろ」

「でもダメ」

「わかってんのかおまえ!!俺が来なきゃ最後には汚ねぇモン突っ込まれてたんだぞ!?」

「うん、だから、ロキは傍に居て」

「ッ、おっまえ…!」

「ねぇロキ。触って?」

「ッとンでもねぇ女だな!?おまえ!」




ー ザーザー



「サラ、あったけぇ」

「ロキもあったかい」

「可愛いな、おまえ」

「よく言われる」

「おまえ、こんな時にソレ言うか」

「ロキは血も涙もない非道の暗殺者なのにそんな緩んだ顔してていいの?」

「おまえの前だけだ」

「ロキも人間だったんだね、血もあるもんね」

「おい」

「私も人間なの」

「……ったりめぇだろ」

「ロキ、あったかい。私も、あったかい?」

「あぁ。あったけぇよサラ」







ー ザーザー



「……なぁッサラ…ッ!あい…つ!殺していいな⁉︎殺す!!!」

「……だ、め……」

「なんで!!!」

「……ロキ、に、殺させたくない」

「ッざけんな……!!、サラ、サラっっっ!!!!」






紅が流れていく

雨が流していく

水で流れていく



地に広がる紅が


サラの命が、流れていく









雨はやんでいた

地を染めた紅を攫っていった雨が


かつて血に染まり命が流れた場所に一人の男が立ち竦む







「なぁサラ。俺を、殺してもいいか」






風が吹く

風の中に懐かしい声が混ざった





「ダメ」


「だって、ロキの手は私だけのものでしょ?」





ねぇ、ロキ




愛してる






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― 新着の感想 ―
[一言] 涙が止まらなくなりました。 ゆーくさんの作品の中で最初に出会ったからという理由もありますが、1番印象に残っていて、また読み返したくなりました。 2人がとても好きです。 幸せになって欲しい………
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