新章4 思いもかけぬ存在
「今日はゆっくり休んでくれ。君達はまだ新部署に慣れるまでは少しセーブして欲しい。毎日業務をして貰わないくても良いよ、徐々にケンシン開発部長の所で学んでくれ、良いね?」
「はい、有難う御座います」
アイカは、21世紀に活躍したと言う美少女モデルのような顔だった。そのスタッフとしてケンシン開発室部長の所に馴染むのに応じて、もう形成手術の必要は無いと彼女も言った。自然とその部署の顔になって行くだろう。
またT新人類の名前もつけていないが、そちらの話に戻ると、それだけ旧時代の器具しか使えないと雖も、その医学分野は発達していた。乱暴な表現だが、20Dプリンタで人の整形を行うようなものなのだ。殆ど人間の手先であるとか、器用さを要求される訳では無い。その程度は端末で行えるレベルであるし、再生治療と言う分野にもそれは応用され、これは和良司令官が遺した器具とその方法で、再生細胞などが失った手足でさえも、復活出来るようについ最近可能になった事だ。T新人類は、その応用をメイ・リー博士とキョウ班長があっと言う間に可能にさせるだろう。これは、コウタ所長が瀬戸内海研究所内で発見していた、メモリカードにあったもので、和良司令官が完全に残していた医療技術でもあった。まだ彼らは前時代の遺産を引き継いでいる事に違和感を持ちながらも、今度は逆にそれに学ぼうとしている部分もあった。
*だが、シンはT新人類が自分達の容姿とシン達が違っている事を認識し、彼等の意志でT国森林に移る事を了承させていた。誰も知らない所で、これは完全に伏せられ、このミッション中に進行したのである。キョウも最終的には納得した。そこは、やはり感情が支配する。反対意見を述べていたが
この日は、コウタが単独でシンの本部にやって来た。酒席以来コウタも、積極的に再びまたあちこちに顔を出すようになって、シンの補佐であるダンと共に、既に№2的存在なのだ。それは表に出て来いと言われている本当の事由だ。しかし、コウタは天才と称されるマルチな人物だ。この日は、5人の事について自分の考えをシンに伝える目的だったようだ。
「どうだった?戻ったばかりでお疲れの所だとは思うが」
「いや、簡単な試乗だったし、相当に改良されていて何のストレスも無かったよ。コウタも今度一緒に乗るか?」
「はは・・それが月にランと一緒に行こうと先約があってな、むしろ、俺は他国の科学に直に触れたい。それに、ランが言うには月にはA国の者達の遺体がごろごろ転がっていたと言うじゃないか。同盟国をとっくに解消したとは言え、同じ人間だからなお墓にでも収めたいと思うんだ」
「それは、勿論そうだな。ランはここだけの話、実際に俺達が死の間際に直面していない事もあるが、あいつにはそう言う死と言う感覚に希薄な部分がある。オオコウモリの件にしても、全て俺が居なかったら、撃ち殺していただろう」
「そう言うものを君達は教えられて来なかったからなあ・・丁度良い話題になった。だから、シンのT新人類達の教育をキョウが提唱したんだろう。それに組織内でテストクリアの新加入即お前と同行を願い出たアイカはどうだった?お前だから分る感覚があるし、人物を見極める眼が優れる者の意見が聞きたい」




