基地
「よろしい・・それでリン君、君が単独行動をした理由は、それなら何だろう?。又、余程の事が無い限り、オオコウモリはここまで襲っても来なかった。何をしたんだ?」
「はい、自分が肥料の事で提案もした事もあって、オオコウモリの主食とする動植物は何かを調べる為に、化学班・分析班に一緒に来いとは言えませんから、単独で周辺動物の獣道を探し、歩いておりました。勿論灌木が繁る密林ですから、オオコウモリには実際襲われないだろうと高を括くっておりました」
「だが、襲われた・・」
「我々は、確かにオオコウモリは翼を広げると2メートル以上もある巨体で、視力も良く、飛翔速度もあります。また、超音波の信号を出し合って、コミュニケーションを取れる正にこの日本が生み出した生物兵器だと、強く今回も感じた次第ですが、その大きな体に比して、体重は15キロ程しか無く、まさか、大型捕食動物を襲う事は少ないと思っていたのです」
「大型動物?周辺に居たのかい?我々には、まだそこまで調査は進んでいないが」
え・・とシンは思った。エライ班長とシリマツ官吏の目的とは、大型動物探索だったのかと今の言葉で悟ったからだ。と・なると、かなりのメンバーはそこに眼をつけている事になるなと推察した。成程・・彼らもまたそれぞれの思いの中で、かなりの者達である事は分かっているものの、眼の付けどころが違うなと思った。
「うん・・画像は、後で渡そう。もう少ししたら、報告も出来ると思っていたし、実動はこう言う食糧になる動物・・つまり、ドームに居ない家畜動物に成り得る候補探しだった。また、肥料の開発が進めば、栽培~飼育への道も出来るからね」
「ほう・・では、詳しく聞こうか、エライ班長・私が、リン君には別室で幸いにしてそれだけの傷を負ったのだから、しばらく養生と謹慎の意味も含めて個人面談を致そう。良いか!諸君。このように、単独行動をすれば、全く不明なオオコウモリの生態についても、その生物的分析にしても今からの事だ。分かっていない事は山ほどあるんだ。常に言っているように危険を常に伴う。これは愚かな行為なんだよ、肝に銘じておきたまえ。今後も許可無く野外活動を禁じる。徹底するように」
シン達も少しこれで動き辛くなった。その晩、案の定ランがシンの部屋にやって来た。丁度シフトが同じで、夜にフリーな時間になっていたからだ。
「よう、話を合わせてくれて有難うな」
「まあな・・互いに言いにくい事は聞かないよ、ちょっと前にシリマツ官吏から、お前と俺は同期だし、共に神野教官から学んだんじゃないかいって話もしたばっかりだったからさ」
「同じ・・と言ってもメンバーの半分は同期だし、半年~1年前後の違いはあっても、これも同期だって言えば、そうなるよなあ・・」
「まあ、俺とお前が結構馬が合うよなって言う話さ。相性の事を考えていたらしい」
「そうか。まあ、上に立つ者なら当然部下の事は把握していなければならないもんな、その点ではマコト副長は、確かに実直で信頼出来る上司だけど、少しこの前のオオコウモリ捕獲にしても、成果を示そうってタイプだから、俺達一人一人の個性や相性までは考えるのは後回しだよな」
「お前・・こうやって15の時から進学コースも同じでもう10年一緒にやったり、違う配属になったり、まあ、喫茶店もどきの情報管理室の部署にもこの半年間俺も居たからさ。余りさっきも言ったけど、互いの事には干渉し合わないようにしていた。と、言うより、このドーム外に出たから、盗聴や、盗撮の心配も無い。余りにも考えて見りゃ管理社会の中で平然と暮らして来た。今の体制になって、色々色んな情報が少しずつ開示されているとは言え、はっきり言って上の組織の顔ぶれも見えやしない。それは、実動班に限らず、全体がそう言う事だから、変だなと思う者も居なかった」
「ラン・・お前は不満があるようだな、言って見ろ」