新章4 思いもかけぬ存在
「とうとう・・虎の尾を踏んじまったみたいだな」
ダンが言う。
「M国の話はこれが終わってからだ、コウタ」
「あ・・ああ」
コウタは、自分がシンに火を点けてしまった事を実感した。しかし、この後に繋がる本当にシン達が遭遇しようとしている困難には、やはりこの組織全員の意思統一が必要だ。そしてそれは自分達も直面している実態だと言う事を知らねばならない。
マコト隊長が画面に出た。早口で説明するシンに納得した。もともとシンには心酔している人なので、否やを唱える事は無い。神野元老も黒川主査も納得して貰えた。そして、シンの初めてと言える組織の訓示が始まった。
「皆様、初めて組織の長として訓示を致します。今組織は大きな変革の時期に突入しました。ここに居る者達が、この組織の旗振り役ですので、今一度ご紹介致します」
画像は、ケンシン開発室部長が、幹部全員の役職名を入れて階級表を急遽作成してくれた。見ている者達にはその画像の並びで、現階級が分かるのだ。若山主任も食料班として末席にあった。その階級表は省略し、シンはこう言った。
「こうして会議の模様を中継するのは、初めてではありますが、組織として今一度貴方達は、一員としての役割を担って頂きたくこの場でご通知申し上げます。組織としての役割を忘れては、それはもはや我々地球上で残された5万人の人類の危機存亡の時を迎えて、皆様と共に、これから生存して行ける保証もなくなります。明日にでも我々はこの地球上から消滅するかも分からないのですから」
一同の顔に緊張が走った。まるで映画を見ているかのように岡目八目で見ていた者達が、え?・・と言う顔だ。
「これをご覧頂きたい・・」
シンは、ショウがまとめていた画像をここで公開した。どよどよと一同の声が聞こえた。
「我々の住む特に九州北部の地域には、このオオコウモリの最大の群れ、頭金がおります。山切りの木で、セパレートされたすぐ先の上空には、常にこのオオコウモリが時速160キロで飛来しており、旧ドーム内で過ごされていた皆さんには、この生体が人を襲うと言う事をご存じありません。我々の体とオオコウモリの翼長を見ればほぼ同じ大きさです。それに対して、我々はいかに脆弱であり、また無防備な人間である事を思い知る事でしょう。またこの森林には、猪、野犬等の動物が居ます。その動物達は、躊躇なく我々を襲います。猿も居ます。当然人を襲う事もあります」
一般の組織の者達は、そんな危険な動物だとは知らなかったのである、動揺が走った。シンは早口で続ける。
そして、次々と画像の説明と、地下通信路、海底トンネル。未だ探索中のこれらの危険性と南九州の火山の様子、対馬の海洋生物、そして最後にT猿人を見せると、うおっと言う声が洩れた。ケンシン開発室部長は画像データと共にその声も拾っているのである。




