新章4 思いもかけぬ存在
「まあ、待て、じゃあ俺も思いついたぜ。シンとランは黙っていろ。お前達はそっちで、ケンシン開発室部長と色々相談していたんだろうから、俺の案を言う。蛇は恐らく通信路じゃなく、水路だと思うんだよ、地下都市及び地下大河があると言う事は、大地の上じゃ無く、全気候対応の生活を選択したM国は、豊富な地下の水脈を利用し、運河のように網目に巡らせていた・・と言うのは推理だ。根拠は幾つもあるが、シンが地下水脈を調べていた所から想像する。とすれば、この地下水脈はT国のように、また下流のガンジス川のように汚染されてはいない。水は黄砂のパウダーで濁っていて透明感は無いが、そんなものはフィルターを使えば十分だし、不要なものは除けば大丈夫。そして水力発電所も可能だ。だが、通信路に光が点灯していなかったと言う事は、現時点では発電設備は止まっているのだろうな。大蛇を運ぶ手段なら、この水路を利用すれば良い。また、水路に大蛇が他にも居るのなら、或いは水圧を利用し、押し流せば良いだろう?俺達は、その水を水路に一気に流し、そして一気に止める。どこかへ水は逃げる筈だ。そうすれば、地下通信路の構造も分るしな、まずそこまで追い込めば良いと言う事も思いついた」
キョウが反論する。
「何とまあ・・ケン。それは壮大過ぎるわ。そこまで調査がかなり必要になる。お前達は、まだそこの調査を始めたばっかりじゃないか。次の次の作戦になるぞ、それは。それに、他にも大蛇?そんなに捕獲してどうしようってんだ?牧場でも作るのかよ、大蛇のさ」
「牧場!蛇牧場ってか!ああはははは!」
ランが大笑い。そして、
「ふふ・・ケンとリンは熱心に水路の事を調べようとしていたな、つまり、言葉の先にあるのは、M国地底湖でもあると見たのか?それは」
「ラン・・お前も油断ならない奴だな、おう・・そう考えた」
「その地底湖はあるかも知れない。それは俺達もそう考えた。そしてその地底湖周辺にM国本部があった筈だ。ひょっとして人類の生き残りも居るかも知れない。それが大蛇の存在だ。俺はそう見た」
「お前ら・・どんどんと情報を出して来て、話を広げるんじゃねえよ、大蛇の捕獲が何でそうなる、何時もだけどさ、この会話はよ」
「コウタ・・今は職制も無く、今までの俺達の素のままに話しているだろ?つまり、この雰囲気って言うのは、本音で話せる重要な会議だって思っているんだ。だからこそ、少し余所行きなお前にダンが挑発したんじゃねえかよ、そこの所を理解しとけ。それに、そんな想定が最初からあるからこそ、探索に集中しているんじゃないか、何の為にT国の擬ガジュマルの木周辺や、その辺を見て来たと思っているんだよ。とっくにT国から更に続くM国への通信路があるんじゃ無いかと思い、調査を密にして来た。ケンが犬達を連れて探って来た」
「やっぱり・・お前達がオープンにしない部分は当然だが、やっぱりそれは疑心暗鬼も生まれる部分がある。せめて何をやるかは、幹部達には知らせたらどうだ?それとも、まだ何か疑うような者が存在すると言うのか?」
コウタは少し表情が硬い。




