新章4 思いもかけぬ存在
シン達は、ソードを利用して、少し時間をかけて通信路の側面の壁を開けた。中は九州で何度も通った事のある風景と同じだった。そして共鳴の光がぱっと照らされる。ここには旧有線ケーブルが敷設してあったと言う事だ。正にこれが日本の技術がある証左である。
「うおっ!」
一斉に全員が声を上げる。何かが、一目散で眼の前から走り去って行くのが見えたからだ。
「何かが居たぞ・・壁を開けている時に、何が起きたのか観察に来たのかな、でもその時は真っ暗な状態だった筈だぞ」
「真っ暗な中でも行動出きるものは居るさ、なあ?ダン」
「ん?俺に聞く?それはここに居るショウもそうだろうが・・つまり全員さ」
「まあ、どれだけ見えているかの数値を比べようもねえからさ。確かに何かが居た、そして目の前から消えた」
「畜生・・犬が居たら、もう少し警戒もしているんだったが」
ケンが言う。シンは、
「危険だ、ケン。犬は、この不明な地では何があるのか予測不明だし、大事な相棒に何かあれば、俺達は責任を負えない」
「何かって・シン。お前は、これまでも犬達の嗅覚、聴覚をとても重宝して来た。だが、このミッションでは、はなから除外して来た。良ければ理由を言ってくれよ」
「そうか、ケン、お前は知らなかったんだよな。俺が何故水の分析をしたのかとか、水脈の探索をしていた本当の理由。そと日本とM国が密に同盟を結んでいた事の関連性もさ」
「それは、ちらっと聞いたが・・?」
「うん・・今この場で説明する時間も無い。眼前で消えた何かの正体も探らなきゃならないが、ランのようにもうサイレント銃を構えている奴も居る中で、ケン、お前こそ、その落ち着きの方を質問したい位だ」
確かに今緊張が走った瞬間に、犬を連れて来ていたら良かっただの、そんな悠長な場合では無い。全員が集中して警戒しているのだから。
「いや・・勿論、今の対象が危ない奴だと想定していれば、当然そうなる。だが、俺が聞いたのは、最初っから危ない奴が居ると想定していたのかって言う事だ」
「成程・・シン、ケンの言う通りだ。そう言う想定を実はしていたんじゃねえのか?ランは何時でも撃つぞ・・こんな通信路内で発砲したら、逆に危ないんじゃねえのか?」
「あ・・おい、ラン。銃を一端降ろせ。ここは、自動操作のこう言う物を持って来ていた。俺達はこれ以上進まない。この壁を開けた入り口で待機する。走らせるから、戻れ」
「え・・あ・・うん」
この緊張は久しぶりだ。第14班に新たな生体が確かに出現したのだ。それも真っ暗闇の中で自在に動けるものだと言う事になる。




