基地
ショウが唾を飲み込んだ。感情を激するのは人間。しかし、それで相手に傷をつけるような行為は、このドーム内の体制が幾ら変わろうが、絶対駄目だと言う事だ。
「はい・・」
全員が頷くしか無かった。その意見を真っ先に実行したのはシンだった。まるでお手本を示すかのように早速、生物班の少し理屈っぽく、大して動きもしないのに、横柄な態度が目立つ小太りの山井弾と言う男だった。性格の不一致や相容れない要素はどんな時代になってもある。それは知能が低い動物間にでもあるものだ。そう教わった事がある。だから、自分にストレスになる事は出来るだけ避けて来たシンだった。しかし、言葉のやりとり、喧嘩は構わないと言うお墨付きを貰っては、ここは言う!そうシンは決めたのだった。
「おい!山井君、君は生物班のエキスパートだと言うのに、ずっと補助要員でつまらないだろう?」
「え・・いや!そんな事は無いさ。俺の仕事だからね、今はこれが」
その言葉に、嫌々やらされている、本来はもっと違う事を、もっとレベルの高い研究がやれる人間だと言う意識がありありと見てとれた。
「ねえ、相談があるんだけどさ、オオコウモリの生体検査なんて他の者に任せちゃって、俺と一緒に共同作業をしないかい?」
そう言ってシンがメモを山井に渡すと、途端に眼を輝かせた。少し前線基地より外で活動を行おうと言う事だった。それは、シンがシンツールと言う企画を提出し、シンマップの作製者である事を知る山井は、オオコウモリの実態観察よりも、もっともっと周囲に生息する動植物のサンプルが欲しかったのである。何故なら、山井は確かに性格的に難のある者だが、粘菌や、微生物の研究においては抜群の能力がある事を、シンは情報監視室で情報を得ていた。その研究心をくすぐったのである。
「で・・でもさ・・」
「大丈夫だ。俺がシリマツ官吏の許可を貰う・・と言うより、神野さんが俺の直属の上司なんだ」
「えっ!き・・君は一体・・」
山井は驚いた。




