新章3 いよいよ
ダンがその考えを伝えると、ケンから丁度報告もあるから、リンを呼ぶと言う話になった。このM国の地下通信路は無かった。もともと砂漠地帯で利用価値もないと見なされていたから、そんなコストを掛けたく無かったのだろう。旧M国は裕福な国では無かったからだが、強欲なT国が領土を求めなかったのにも、過酷な環境が壁を作っていたようだ。しかし、シンには何か逆に魅力があるように思えてならなかったのである。
その辺の散策に近い歩きでは、殆ど肉視出来るようなものも無く、二人はMSI飛機に戻り、また話を始めた。
「シンは、水の中に微生物や細菌が居ると思っているのか?」
「ん?まあ・・そんな所だな。それは各地の泥や、海水、湖等も調べて来た。同じ事だよ、ダン」
「確かにそうなんだが、宇宙エレベータの話もしただろう?勿論、その事で、今どうとかじゃないんだけど、太陽系内衛星の中には、そう言う微生物や菌類も居たと言う話だ。地球外から隕石等で高速で落下してくるものは、空気を圧縮し、その空気中の分子がが激しくぶつかって高温となるから、そこで生きている細菌は居ない。だが、空気の抵抗を受けて減速する必要の無いエレベータ式の低速で地球に降り立てば、断熱圧縮熱は無い、だからそう言う未知の菌類が地球にもたらされる事はあるかなと思ってさ」
「又宇宙からの帰還を蒸し返すのか?いや・・有り得るよ、今の話はさ。絶対零度でも死なないクマムシの話もしたが、高温でも生きて行ける超高熱菌と言うのも居る。80度以上でも耐えられるもので、中には122度でも増殖出来る生物も居る。つまり熱水でも生きていられる菌だ」
「へえ・・そんなのが居たんだな、専門分野の俺でさえ知らなかったぜ。つまり原始生命体のようなものかな」
「ああ・・その通りだ。原子地球の環境で生きて来たものだと言われている。つまり、宇宙の中にもそう言う生体は居ると言う事さ。だが、そのような環境を好む場所であれば増殖も出来ようが、いきなりやって来て、その環境じゃ無い場所に放り込まれて生きて居られるかな・・その辺の事さ。それより、地球内部で例えば電磁パルス爆裂に耐えきった生命体・植物を探すと言うのが先決だ」
「主旨は分かったよ、その為にソードの用意までしているんだもんな」
「それは、もしも、もしもの時の為の安全係数さ。目的上にその存在が居る訳じゃない。だが、居ないと言う確信など何もない。だろう?」
「だ・・な。おっと・・あれ見ろよ、もう無人機が到着しちまった。ここまで1時間位だぜ、驚く速さだ」
「それこそ、マッハ3の音の壁を軽々と超えている。構造上の熱を空力の原理を利用し、逃がしているんだよ。宇宙エレベーターの原理を、ケンシン開発室部長が地球上で応用しているんだ。空気の壁の中でさ、圧縮された空気の分子は高温になるが、逆に膨張させれば気化熱で温度を下げる。つまり、2重構造と言うのをMSI飛機でやっているんだと言う事さ」




