基地
シリマツ官吏が、そう言う風に弁論を誘導するのだと巧みな話術に、少しシンは感心した。つまり、彼らもそう言う上に立つべき教育を受けて来た者だと言う事だ。
ここで、
「うん。子どもの遊びに小さな爆竹と言うものがあったようです。それは、今回爆弾使用と言う手段も考えられた・・と言うか、旧時代の戦争武器なのですが、作られる事になっていました。それを小型化したもの、つまり音に敏感なオオコウモリであるが故に、それを近くで炸裂させれば、殺傷力等は求めていないから、逃げるコースを失い、網に掛かるのではと、使用したんです」
「あ・・何か大きな音がした事があったな。あの直後オオコウモリが捕獲されたと聞いた」
カイが言うと、マコト副長は頷き、
「そう!そのタイミングだった。しかし、網に誘導してからが更に大変だった。オオコウモリの牙は鋭く、爪も非常に強力なものだったから、更に用意した網に追い込むまでが大難儀したんだよ。君達は、檻に入ったオオコウモリしか見ていないからね」
「どんなにやったんだ?」
カイが興味を示している。シンには特にそれ程興味は無かった。
「細い網を使って、出来るだけ傷をつけないように、少しずつ檻にロープを絞って追い込んで行ったんだよ。つまり、それだけさ」
「はい、有難う。簡単に行かなかった事は、誰もが分かっている。つまり、諸君も自分の得意分野を生かし、色々手段を考案し、現在も通路から前線基地、監視小屋的な設備も出来た次第だ。それも我々が想定していたより、ずっと早く、可能かどうかも分からない未知数の実動でだ。そこで、今回は、これも初めて我々が事務系統の生物班・化学班・分析斑の派遣も決定し、諸君には大変御苦労だったと思うし、気遣いもあった事だろう。それなりに我々も見て来たつもりだ。私が言いたいのは、彼らも君達も、もっと意見を出し合い、自分の得意分野だけでは無く、相談しながら、或いは意見をぶつけ合い、それで行動をして欲しいのだよ」
「あ・・それでは、喧嘩になっても構わないんすか?」
ケンが言う。殴ってやりたかったのはショウだった。先に言われたと思った。
「意見をぶつけ合う喧嘩は結構だ。どうしようも無い時は仲裁にも入ろう。だが、互いの肉体を傷つけあう喧嘩は厳禁だ。よもや、そうなるとドーム内裁判にまでかけられる事になる。よろしいかね」
「う・・」