新章3 いよいよ
「ああ・・危なかったぜ・・無人の自動運転だから、MSI飛機は横揺れ、縦揺れしながらも急上昇し、引き返したが相当のダメージを機体に受けたと言う。そこでまだまだ遠距離飛行は駄目だと言う結論に達し、この前の会議まで試験飛行を試して来た。つまり、この高度10000メートルが最も安定した飛行ルートなんだよ。今、その地球全体の風の流れや、大きく過去とは変わった季節風によるMAPを作成中さ。いずれ、自動制御無人機の気象衛星的な機種開発をしたいと言っていた。この現象は、電磁パルス爆裂以降、このような大気の流れが出来たとケンシン開発室部長は見ている。黒川主査も、そこの部分については分からないと言っていた」
「そうか・・この山容がなあ・・初めて見る俺には、これが当然かと思っていたが、地殻変動の跡か・・」
このように、地球規模の大異変の形跡をまざまざと見るにつけ、ここまで他国の人類に出会わない事にも、憂慮している気持ちもあり、ダンがそう呟いた。高速飛行のMSI飛機は、そこを抜け、M国の以前草原だったと言う大地に、間もなく降りるのだった。今回の目的はここにあった。シンがこの上空を何度も飛んでいたが、やはり他と変わらぬ不毛の赤茶けた大地でしか無かった。
「思う通りの風景だが?とても広大な砂漠地帯だよなあ・・気温はちょびっと肌寒いか・・16度しか無い。比較的暖かい日本で行動して来た俺達だからな、北海道よりも寒いぜ」
ダンが、シンが用意していると言う紫外線防止の上服を着た。紫外線は、遮る物の全くない大地に、容赦無く降り注いでいる。人体にとっては有害な光線なのである。その反面植物にとっては光合成をして、栄養を作り出す元だ。そして酸素を吐き出す。動物と植物は共生関係で無くてはならぬ物だ。そのシンが、
「不毛の大地にしか見えないんだが、ケンやリンの話によればT国から相当の地下通信路が伸びているのでは無いかと言う事だ。ただ、日本のような素材では無いし、劣悪な材質だから、殆どあったとしてもそこを通行する事は、不可能だろうと言われている」
「だろうな・・そこまで何重にも安全係数を見て徹底する日本の技術には追いつかないさ。全て算盤勘定で工程を省こうとするのが、鎖国政策を選択した日本以外の国家だったと言われている。なら、数百年単位で保つ地下通信路の目的や構造自体は違うだろう。で?シン、ここへは何を?」
「それは、今からさ・・今から調べる為にここに来た。ダン・・お前の眼でここを俺と一緒に良く見てくれ。犬達も今回は連れて来てはいない。何があるかも分からないからな」
「何があるか分からないって・・何かあると言うのかよ。何だ?それにこの棒は・・」
「ふ・・それを振って見ろ、前方に向けて剣道の『面!』と叫んで真っ直ぐ振り下ろして見ろ、ここなら何も無いから、丁度良い」
「これを・・?良し!面ーーーーーっん!」
ダンが上段から振り下ろすと、地面がどかーーーーんと音を立て、前方100Mまで切り裂かれるのであった。




