新章3 いよいよ
「で・・?その子犬をどうする?」
「ああ・・欲しいと言う者は幾らも居るが、幹部達には、ほぼ渡した。しばらくは『戒・愁』の孫の教育掛かりでもさせておくさ。誰かこの子犬達のパートナーとなれる候補は居ないかなとも思って連れて来た」
「母犬の『柳』はどうした?」
「もう乳離れの季節でもあるしな、『柳』は殆ど子犬の教育には無関心だ」
「ふうん、そうなのか。じゃあ、一匹置いて行け」
「候補が?」
「ああ・・一人、技術班にヨウタと言うのが居て、結構こいつが器用なんだよ。ランも眼を掛けていて、設計図を渡すと部品から自分で作っちまう。分解して普通はその通りに誰でも作るだろう?ヨウタは、必ず自分のオリジナルで、その元より機能的な物を作るんだよ。と言っても、これも旧時代の工作って感じだがな」
「ある物を工夫して作る・・重要な事だ。それなら1匹、そのヨウタにやってくれ。シンが言うからには余程の奴なんだろう。また子犬をやると言うのは、幹部しか犬の相棒が居ないからな、それは特別だ」
「ふ・・そう思ってくれれば良いがな・・ただ『野犬』の血だから、その中でも特異遺伝子を持つと既に分かっている『戒・愁』とその子孫達とは違うと思うからな」
「それで良い。全てそう言う特異な犬ばかりなら、人工保育のT新人類と、T猿人の違いすらぼやける」
「流石にな・・抵抗はあったけど、やっぱり何と言うのか、我々は自分達の価値観と言うか、見慣れた感覚で、やっぱり美醜とか先入観を持っているんだと痛感した。実際T猿人は調査の中でも実に温厚な種で、草食系の大人しい生体だった。それを見かけ上見慣れない、異様な姿と固定観念に囚われ、正当な評価を下せずに居た。俺は、前にダンの事を個人プレイとして叩いた事があったが、首班としての立場であれば、そこをもっと客観的に冷静に見ないといけなかったんだよな」
「それは、シン、仕方が無い事だ。それがつまり人間なんだよ。だから、その辺の感情とか自分達の価値観とか当然美醜等の個人差が、絶対に生じる。そこを組織、仲間で生きて行く為に知恵を出し合う。今の俺達がそうだろ?もっと言えば、それが無くなれば自分達は滅びる。それが現実にあるからこそ、同じ方向を目指しているんだよ」
「ケン・・お前の言う事に、何かすげえ説得力があるように思える。そうだよな、俺達はもうあれがいけない、これが駄目だと都合の良い方角だけ見ていちゃいけない。その時々で方法論はまた見つかる。だから今可能な道を歩いて行く・・そうだな?」
「ああ・・何度も同じような話はして来た。だけど、それは必要な事なんだ。成功して有頂天になっていると、つい、自分の足元を見失う。俺達って、そんなに簡単にクリアして来たか、そこには岡目八目的で戦術が見えるかも知れないが、全ては結果が後からついて来たような賭けに近かった。けど、その中には実際の現実論がしっかり根付いていた。俺はそう思っているのさ」
「ケン・・」




