新章2 見えない敵
「まさしく・・その事が、私が今応用している有線LANと無線LANを繋げる応用になります。電子の中には、宇宙と同じく太陽=原子核とすれば、その原子核の周囲に、電子がぐるぐると回っております。その電子は、軌道が外になればなるほど電子のエネルギーが強くなります。つまり、電子のエネルギーの弱い内側軌道の電子に、そのレーザー光の照射を行う事によって、遥か遠くの原子核まで飛ばす事・・リュードペリ原子と言いますが、基本的にどの軌道の電子もそのリュードペリ原子に出来ます。それを応用したのが無線の光ケーブルの根本なのです」
「非常に難しいが・・つまり、強引に塔の構造を今まで量子発電とか高分子砲とかと色々言って来ましたが、それも応用の一つで可能であるのでしょうか?」
「勿論・・その電子エネルギーの強化を行えるのならば、それをコントロールする事によって、例えば何もない空間に電子を飛ばし、そこに道なり連結する事は可能となります。ただし、それをコントロール出来るものは、もはや、ありません」
「いや・・つまりAIがそれを可能にしていたと言う事だ。それならば、今の塔の存在とは何か?この塔が何かに使われた、或いは勿論使用する為に建立されているのに、その資料すら希薄だと言う事にある。量子発電所の経緯はあった。確かにその地下内部に大きな発電力を必要とする何かが必要だったのだろう。だが、我々は危険と見なして断線した。よって、この塔の役目は失っていると思うが、いかに?」
「その通りでしょう。動力としてこの塔を稼働させる為の施設でしょう」
ケンシン開発室部長の言葉に頷きながら、ランが言う。
「断線などはあっと言う間に修復は可能。AI管理と言うのも分かっているが、問題は複数のカードの何枚かがここに必要。それがAI端末BOXに使用される。俺とキョウ班長が一緒にやった時期はあったが、とてもそんな解析や、やる時間も無くて、今はショウと時間があれば開示プログラムを作っている」
「そうか・・ラン班長がそのエキスパートだったね。俺ともやっていたが、今君が言った通りだ。とてもそんな事をやる時間が無い、自分の体が足りないよ」
コウタが苦渋の顔になる。それは、この幹部達全員がそんな現状である。
「では、勿論こちらの塔を稼働させるつもりも予定も無いが、何かである事の証左を示さない限り、塔周辺を探れないと言う事になります、生きている事を信じて願っているが、観察班の救出は、時間との闘いです。彼らは実働班のように外の訓練に慣れては居ないし、そう言う運動能力も無い。そこを今、どうすべきかの議論なのでは?」
少し苛立ったように、ケンシン開発室部長は言う。だが、この連中は、そんな会話の中から実に今まで多くの解決策を見出しているのだ。脳内はフル回転だ。そこが、ケンシン開発室部長は優秀だが彼らとは決定的に違う部分である。ショウが言う。




