新章2 見えない敵
「成程・・発想力・・その点ではシン・・お前が一番だ」
「よせやい。俺は記憶力は悪くは無いがな」
「まあ・・そうやって謙遜しとけ。俺はいつもそう思っている。だが、ある物を改造する能力、応用する能力と言うのは、ケンシン開発室部長も第一人者だろうが、ランも非常に優れている」
「ああ・・俺もそう思う。プログラミングの才能は、特に日本国産のPCに21世紀の中頃から切り替わって、数億、数千億種類のコマンドが可能になった。こんな物を造る技術が我々の国にあったからこそ、発明じゃなく応用力、発想力がそのDNAに残っていたんじゃないのかな」
「あ・・話を飛ばすぜ?コウタ班長がT新人類に教育し、何かをさせようと思っているようだが、どっちの才能を期待しているのかと言う話になれば、発明力の方か?」
「飛んだな・・いきなりぶっ飛んだ・・ああ・・そうかも知れないが・・あ・・リン・・ケン達が到着したぞ」
話はそこで切れ、
「お・・『戒』だけ連れて行ったのか」
リンが耳をぴんと立てて、かなり周囲を睥睨する『戒』と、厳しい表情のケンと共にMSI飛機を降りた。シンとリンが以前に見た、靄の立ち込める風景だった。シンは、今では携帯電話並みの通話が可能なこれも光ケーブルの応用だと言う通話機で、
「ケン・・そこはかなり危ない地帯だ。絶対無理はするな。恐らく観察班はその靄の中に居る」
「おう・・『戒』の様子を見ても、臨戦態勢に入っている。上空に一端飛び上がろうか?このままでは俺も、何か感覚が狂いそうに感じる」
「ケン・・お前の思うように動け、靄の中は一端入るのは厳禁だ。俺達は、まだその磁力線とか電磁場変異の仕組みが分かっていないからな」
「分かった・・『戒』、何かを発見したようだが、お前もこの中に入ったら、戻れない可能性がありそうだ。戻れ」
「わ・・う」
ケンの指示に『戒』は従い、MSI飛機に再び乗り込むと、無音の状態で上空1000Mまで一気に飛び上がった。
「おう・・」
それは同時に、シンとリン・・そして現地のケンの眼に入ったものだった。
シンも気づかなかったが、それは塔であった。まさしく白亜の塔が真っ直ぐ直立に伸びていた。




