新章2 見えない敵
シン達は今出来る事をやっていた。森林は広がり、T国へは普通に行けるようになった。ただし、MSI飛機の高度飛行は中断されたままだ。かなり危険だとシンが指摘したからである。航空技師でも無い、その道には素人であるケンシン開発室部長が幾ら開発した乗り物であっても、それは安全係数を深く考慮し、全てを検証し網羅したものでは無い。技術屋が育って来るにはまだ時間が必要だが、ぽつぽつとその幹部候補も増えつつあって、かなりケンシン開発室部長のセクトも、充実して来た。相変わらずシン達は遊軍部隊のようで、首班と言っても再び既に神野元老や黒川主査が表に出てくれるようになってからは、少しだけ動けるようになっていた。シンは相当忙しい毎日を、弱音も吐く事は無かったが、過ごして来たからだ。シンは今28歳になった、本来なら青春の真っただ中である。そして猿人への人口増員計画が始まった。既に移植され3か月が経つ。順調ならば、後半年で体から取り出す。猿人の体に負担を掛けない為と、そこからなら人工保育機で育てる事が可能だからだ。もうシン達が野外行動を始めて4年目を迎えようとしていた。全てが順調・・である筈は無かった。スタッフの一人が血相を変えてシンに報告に来た。
「シン首班!た・・大変です。北海道に向かった森林移住計画班が行方不明になりました!」
「な・・何!」
シンの顔色が一瞬で変わった。
MSI飛機は、ほぼここまで安全飛行を続けており、改良も進んでいる事からそちらの故障では無いと思った、
「どの辺りで消息を絶ったんだ?」
シンが聞くと、
「丁度根室の辺りです。そこまではMSI飛機が行ったまでは記録されています」
「分かった・・ケンを呼ぶ、犬2匹も連れて来させる」
「あの・・」
「何だ?」
「シン首班は重要な立場でありますから、ご一緒に行くと言うのは」
その言葉を発したのは、やはり人材発掘プロジェクトで最近抜擢した、シンの秘書的な役目を担う、エイジと言う同年代の男だった。その後エイジは、ダン副首班の配属となって行く。




