新章 新世界
ダンも苦笑するしか無かった。悪意が無い分だけ始末に悪いと言う事か・・。
彼らは、このようにあらゆる全般に眼を光らさねばならないのだった。補佐する者、忖度が出来る者も育っては来ている。しかし、未知なる道を歩み始めたばかりなのだ。そこに指標は無い。自分達で見つけていかねばならないからだ。
「で・・ここからが報告。地球をそうだな・・ぐるぐると回って来た。MSI飛機の事を過大評価はしないが、ちょっとした人工衛星になって自分が飛んだ気分だ。空には星が瞬き、昼間は紺碧の空だった。無重力の高度までは到達出来ないが、確かにこの高さになると操縦が必要だ。自動操縦は利かない。ただ、ケンシン開発室部長によると、幾つかアイデアはあると言う事だ、改良の芽は無数に出て来ると言う」
「それはそうだろうな・・それに、そのケンシン開発室部長の言葉は非常に頼もしいよな」
「まあ、ダンもその内にこう言う事もやって行くだろうが、やはり機体にダメージは生じたようだ。現実的には、そう簡単にこう言う乗り物を製造するのは簡単にはいかないとは思うんだが」
「まあ、それもそうだろうな・・」
ダンは相槌しか打たなかった。言いようも無いからだ。
「今回の飛行でまだまだ世界一周なんて夢は当分捨てようと思ったんだよ」
「同じ事を繰り返すが、それは賢明な選択だと思うぜ」
「まあ、仕方が無い事だ。一気にやろうと思う方が無理だもんだ」
「で?何か気づいた事が勿論あるんだろうな。T国の件は、既にお前の中ではほぼ完結状態だった。確かめに行かせ、あいつらの分析力を計っていたか?」
「ふ・・そんなに俺の思う通りだったら、みみずの中に回虫って驚くかよ、お前だってそうだったじゃんかよ」
「はは・・びっくりしたけどさ、俺も」
「だろ?予想や想定は誰でもするさ、未知の世界では全て疑心暗鬼の模索だ。その中で自分の中である程度の分析も必要だ。咄嗟の場合のそれは対処にも繋がる。難しい事をやれと言うんじゃないが、第14班の連中にはそれが出来る。危機回避力も高いし、その人間を遥かにその感覚が上回る犬達を同行させている」
「だったな・・だから、パンピーと馬鹿にする訳じゃないが、実践の『じ』も知らない連中が物見遊山でどこかへ行きたい、MSI飛機に乗りたいなんて言うから腹が立つ」
「はは・・その通りだよ、ダン」
シンは笑った。




