新章 新世界
「情報は勿論出て来ない。出て来る筈も無い。もし生前にそんな密約をしていて暴露されようものならば、即刻抹殺及び、戦争は開始されている。こんな事は、あってはならない事だからな」
「だろうなあ・・じゃ、どのような推論で?」
ショウが聞く。パソコンに記録する気だ。シンが、
「おい、ショウ。パソコンに記録するんじゃねえよ。お前がセキュリティをかけていようが、ネットに繋がった時点で、それは秘密じゃなくなる」
「そんな・・じゃあ、昔と同じ状況じゃねえかよ」
「そこは明確に違う。お前が記録するのは正確な情報だけだ。口語で伝える事は、記憶に留めろ。今までもそうだっただろう?人間と言うのは、情報を面白可笑しく過大に伝えるものだ。それが話が大きくなり、俺達が振り回された昔と同じ状況だっつうんだよ」
ショウは頷き、
「分かった・・聞く」
「確かに俺達は阻止した。出来たと言うか、実は何もしちゃいない。自滅した形で和良司令官は消滅した。あの時、何で象の腹に猿人が組み込まれたのかは、謎だった。自分達のコピー、或いは再現体を作るならシリマツ官吏で十分だった筈。しかし、それでは満足しなかった。やはりそこは、究極の100点満点では無く120点を求める人だったからさ。ここは推論、やはりT国への通信路は抜けていた。レンジでの立場なら、行き来は可能だ。大体地下掘削班の連中に、何であいつのような突出した人材が居た?居る必要は無いんだ。それこそ重大な犯罪を犯したか、作業班として組み込まれる者達であり、待遇こそ良いが、セクト最悪のポジションなんだからな」
「じゃあ、最初からレンジに疑いを?」
「蛇の道はヘビ・・俺は元隠密班だ。それは当然の事として聞いてくれ」
「ああ・・」
ショウとケンは頷いた。ランもその隠密班のメンバーだった。
「その中に既にT国からの博士5人が混じっていたらどうなる?勿論地下掘削班に一端指名されたなら、余程の事が無い限り異動は無い。埋め込まれた体内チップもチェックをされる事も無い。そして、若返りと言う施術を行っているのなら、もはや表に出る事は無い」
「そうか・・そう言う方法なら」
「動く手段は、だからこそ対馬なんだよ。50キロと言う短い大陸までの距離だからこそ、こう言う移動も成り立つ。或いは洗脳したと言い換えても良いし、まだ色濃く残る共産主義的土壌は簡単には消えないさ。でも、それが無くなったからと言ってA国のような自由主義になる訳が無い。やっぱり自国中心主義、覇権を目指す、人口が減ったとは言え、世界一の大国なのさ。彼らはとっくの昔に人の選別を行っている。つまり優秀な者を選び、特権を与える方式だ。科学者達も天才揃いだった筈だ」
「うん・・」
シンの話は説得力がある。頷ける話だ。




