未来とは
言いかけて荒井は、納得したのだった。全てを互いに細かく披露する必要は無い。ある一定の流れの中で、ぞれぞれが違わぬ納得をすれば良いだけだ。もう、何度も言うがこのドーム内の体制・秩序は変わったのだ。外へ眼を向けざるを得ないぎりぎりの状況で、どうにか彼らは未来へ生を掴むべき行動をしていると言う事なのだ。
シリマツは口元を少し緩めただけで、肯定をする事は無かったが、シン達にもその言葉のやりとりが理解出来た。今までの秩序が大きく変わろうとしているのだ。そして、その変わった事は何度も何度も反復し、全ての者がその流れを理解して行かねばならない。そう言う洗脳では勿論無いが、教育に関しては、間違ったものでは無かったが、特にシン達には過酷な事を要求された。つまり、シン達こそ、その負の教育部分を受けた者達なのだ。彼らも、大きくこのリーダー達によって変わろうとしているのだった。
「では・・今の短い期間の分析結果ですが、今回実動班の貴方達に是非お見せしたいと思い、お招きした一番の形態的特徴をご報告致します。それは、今後前線で活動される皆様にとって、少しでも役立てるかなと思ったからです」
荒井首班は、今回の発見によって、飛躍的に活路が開けるのではと思ったのだ。それを披露する。
「特徴的な部分は、実は頭部にありました。改良前のオオコウモリの頭部と比べて、スライドでご説明しましょう。こちらへ・・」
シン達は別部屋に招かれ、スライドを示された。既にこの時代ではレントゲンは旧時代より遥かに進化していて、それがそのまま残っていた。最先端的なこの時代に残った器具の一つであった。スライドは旧時代のものではあるが、新旧が混在はしているものの、それを見比べる事の出来無いシン達にとっては、新鮮なものに見えた。
「ご覧下さい。骨格形成的には、やはり非常に肩甲骨が発達しており、翼が約1.3倍になっており、それを支える筋肉も進化と言うべきか改良されております。それに、何よりも大きく違うのは、倍以上もある頭部です。恐らく知能的に見て、T国のカラスが、一番頭脳が高いだろうと言われておりましたが・・あ・・失礼披露しても良かったのでしょうか、シリマツ官吏」
「まあ・・もう口に出されたのですから、しょうがありません。皆さん、そうなんです。既にT国がカラスの生体武器を開発していた事は、分かっております。・・どうぞ、続けて下さい、荒井副主班」
少し苦笑いをしながら、荒井副主班は続けた。このカラスの情報は、今は要らない。この日本に飛来して居れば、又オオコウモリと共に警戒第一番の生体武器だ。今のところ、その痕跡は無い。日本では、オオコウモリがやはり国土を席巻している可能性が高いからだ。