新章 新世界
「戻ったら、ケンシン開発室部長とは別に、ショウも忙しいだろうけど、メイ・リー博士を加えて貰って、そこはシンにも伝えとくが、理系の強い人間が身近に居るのに、先頭に立って貰わないと駄目だと気付いた。生体班の事は、キョウも一緒にやって来た。コウタ研究所長は重要な案件を幾つも抱えているからな、オブザーバーでも良いが、キョウ・・すぐ解析をやるぞ。もしそう言う目的でこの遺伝子操作を組み込んでいたのなら、やっぱり和良司令官は超天才だ。その後の世界を考えての準備を怠っていなかったと言う事になる」
「かも知れないが、ダン・・俺から警鐘を鳴らしとく。俺達は超えられるとは思わないけど、何時までもこの和良司令官の幻影に振り回されていちゃ駄目だと思うんだ。人類繁殖計画・・何だか響きも悪くて嫌だ。人類復活計画とせめて俺達は呼ぼうぜ。そして、自分による自分の為の開発じゃ無く、もっと大所高所に立った夢にしたい」
「キョウ・・お前は実に良い提案を今した。おう!やろうぜっ!」
こっちのテンションが上がって来た。
こうして、やっとその1週間後、ラン達は元T国大陸で上陸した。既に無人MSI飛機が海岸に到着していた。潜水艇は、自動操縦で戻って行く。簡単なナビゲーションは、衛星など利用する事も不要だった。無線光ケーブルの応用が、これ程便利なものだとは知らなかっただけである。その応用を、発見しただけでもケンシン開発室部長が凄いと思われるが、それを自画自賛するような人では無かった。有線光ケーブルと反発する性質の中に、やはり同じ使用方法があった事に気づいただけの事で、それをコントロールするAIほどの制御システムは必要無く、旧PCで十分出来ると言うのである。しかも、やはり繰り返すが、そこは全国産の日本製品は、非常に頑丈で、100年使用しても壊れないと言われるような資材と部品を使っているからだ。それも、今までは経済を優先していたから、逆に壊れない選択枝は有り得ない。製造し、売買する事によって自国の産業を守り、雇用の創出を必要とし、国益を主とする仕組みで成り立っていたからだ。しかし、世界的な人口減の世界において、もはやそう言う経済活動の必要性は薄れた。自国による自国だけの新世界的秩序をどう生き抜いて行けるかにシフトしたのである。だから、壊れない、不必要な製造を不可とし、頑丈な物を作る。それが技術国日本として次第に鎖国政策の舵と共に磨かれて来たのだ。そして過酷な情報合戦の中で、まずそう言うアクセスさえもシャットアウト出来る仕組みが発展して行く。今はもうそんな繊細で複雑なAIのような人工知能は要らないのだ。単純なコマンドで十分だと言う考え方も、シンプルだ。最も和良司令官の影響を排除出来ているのは、このケンシンと言う人物かも知れないなとダンは思った。その頃シンが何をやっているのかと思えば・・




