新章 新世界
「じゃあ、そのメタンハイドレードの溶けだしている中に、危険なウイルスや微生物が海中に放出されていると思うのかい?ダン副首班は」
「ああ・・それは思っているさ。当時海底噴出孔には、メタンハイドレードとは違うが、特異な生物群が居て、そのチムニーと呼ばれるものが形成され、そこから生命が生まれたと言う説が証明されてから、実は細菌と言うのは重要な媒体の役目を果たしているんだ。電磁パルス爆裂後に浅海・特に海水面の微生物は恐らく死滅し、海底に沈んで行ったのだろう。繰り返しそれが行われる事で、ほぼ浅海における海洋生物、珊瑚等は壊滅した。だが、その媒体も存在しない海で、こんなメタンやアセトンも放出され続けている現状は、やはりこの先地球の未来は無いと思えるんだよ」
シンが、
「そこか・・ダンの憂い顔って言うのはさ」
「ああ・・そんな先まで考えていないと言うのなら、今を生きるでやっている俺達は、成す術も無い事ばかりをそんなでかいテーマで考えたってしょうが無いし、今の地下生活を選択した先祖がそこまで考えていたんだなって納得も出来るさ、でも、俺達は緑が青々とし、動物達が少なくても人間にとって友好じゃない種も多いが、本来の自然と言うものに触れて来たし、今コウタ班長が根を張って調査もし、研究しているモデル地区なんだろうな、瀬戸内海の海洋生物群の存在を、これが本来の姿なんだと、その復活に眼を向けている。ラン達、ケン達、それぞれに重要な役目を担って、危険かも知れない探索に行っているのに、これで良いのかなって思ってさ」
「ダン副首班・・君の考えは理解した。だが、君は負の思考が先行してしまっていないのかな?メタンは、その昔有用な燃料として注目された事がある。今エネルギーをそれに頼らない我々にとっては、その熱水噴出孔にはあらゆる重金属や鉱物資源、有機物、ミネラルも含まれている。それらが逆に俺には思えるね、それ・・天然でそんなに生成されているのなら、使ってやろうじゃ無いかってね。今だからこそ理系班が必要だって教育の強化や、第3世代以降の残念ながら、第4世代の人口増員計画は頓挫しているが、その者達には、遥かに改善した食や若返り効果で細胞も活性化してきている。そこにどうにか光明が見えて来た所だ。君がそんなマイナス思考になってどうするんだよ。確かに危惧している事は良く分かるが、逆に発見してしまった、やったなと言えるように発想を転換したらどうだい?その発掘プロジェクトが功を奏したら、俺達は独占的にこの地球上の全ての資源を自由に使えるかも知れないんだぜ?夢はそこに無いのかい?それでも悲観するのかい?」
「え・・逆利用するってか?」
ダンが顔を上げた。恐らくシンも思った。ダンの危惧は、非常に重要な部分であろう。でも、こう思った。




