新章 新世界
「そこが、ケンシン開発室部長の凄い所っす。シン達が乗って違和感を持った部分を、あっと言う間に10Dプリンターで改善し、2重構造にした結果、俺達が座っている底の円盤は、実は磁力のNとNで反発し、宙に浮いているから、2重構造の外側と内側がその推力とGを俺達に全く感じさせない位に超高速で進めるようにしたらしいんすよ。俺に分かるのはそれだけっす」
「いやいやいや・・それだけ聞いたら、もう十分。すげえな、じゃあ相当スピードが出るんじゃないのか?」
「ええ・・理論上は、時速12000キロまで出るらしいっす。音速の10倍らしいですが、そこまで今は試作段階だから、時速3000キロが最高でストップ制御されている見たいっす」
「それでも全然これまでと違うじゃないか、この時代にこんな事が出来るなんて凄いよ」
「聞いた話っすから、正確じゃないかも知れないけど、鎖国政策を日本政府が発表し、全て今俺達が100年、200年、もっと前のPCなんて使っているけど、それだけ使えるのは、全て国産で、徹底して頑丈に長持ちする材料で作ったからだそうです。腐食もしないし、今までの電気回路も全て変えて、他国には使えないように、日本語でCP言語も作り直した。俺達はそれしか習っていないから、当たり前に使っておりますけど、だからこそ、こんなに長持ちしているし、10Dプリンタも産業資料館にある物を使っているから、60Dなんてものすげえ機種らしいんすけど、それはAIじゃなくてはならないから人間的な操作は無理。せいぜい10Dなんだよねって笑ってましたが、このMSI飛機がその10Dで、あっと言う間に2日間で試作機が出来て、もう日本の北から南の沖縄まで30往復は自動コントロール下で飛ばしたらしいっすよ。ケンシン開発室部長はやる事が違いますよね、ははは」
「頼もしいなあ・・本当に。技術者、ケンシン開発室部長には頭が下がるよ。喜んで試乗させて貰うさ、おい、ケン、ラン達がこの大陸に渡って来たら、何を遊んでいるんだ?お前達はよって言ってやろうぜ」
「ええ!言ってやりましょうよ!」
はははと、2人は上機嫌で、MSI飛機に乗り込むのであった。
そして、のんびりと海中の中・・とは、当然行っている筈の無かったラン達だった。勿論対馬海洋研究所にはダンが張り付いていて、心配そうにモニターを眺めていた。
何故ラン達が大陸まで未到達なのかは、速度も出ない海中での潜水艇での出発だったからだ。やはり生物の姿は皆無であった。浅海には電磁パルス爆裂の影響が色濃く残る。対馬・瀬戸内海は例外なのである。それを体感せずには居られないラン達だった。そして、彼らは、南西諸島の主だった海域を出来るだけ回ろうと、予定を変更していた。燃料の心配が無い事が分かると、食料も十分だ。犬には退屈だろうが、完全食故に、排尿・排便の必要もない。犬にもこう言うものが開発されたのは、やはり若山元室長の役割が大きい。人は、ある一つの才能を見出してやれば、能力を発揮出来る良い例である。故に今能力発掘プロジェクトに力を入れているのだ。今居る人員でとにかく手を掛ける事無く、且つ利便な方法を模索すると言うのは言葉は簡単、だが至難の事なのだ。




